道化師

2001年11月21日 水曜日

 風邪をひいて高熱を出すと、決まって見る夢があった。
 その夢ではいつも、僕は異次元空間を苦しみながら漂っていた。異次元空間は、壁がゆらゆらしていて、ダリのようなゆらめく時計模様があり…。
 解りやすく言うと、ドラえもんのタイムマシーンの時間移動中の背景である。移動中のタイムマシーンから落ちた所を想像して欲しい。
 そこは時空の狭間で、みよーん、みよーん、と周囲は波打っていて、泳ぐように漂っているのだけど全身が重くてうまく動かない。その夢には「音」と「匂い」もあった。これも毎回決まっている。グオォォォォォ…というような、微かな轟音。錆びた鉄のような匂い。

 しかし3年ほど前のある日、ひどい風邪をひいて、またその夢を見ていた僕は、唐突に「乗り方」のコツを掴んだ。時空の流れに逆らうのではなく、そのまま身を任せてしまうとそれほど苦痛ではなく、むしろちょっと楽しみすら感じた。宇宙遊泳もこんなものかもしれない、と。
 そして熱が出て3日目、僕はいつものようにいつもの夢を見ることを予感しながら眠りについた。

 しかし、そこに広がっていたのは何も無い空白だった。真っ白い空間に、僕ひとり。
 と思ったら、遠くに一人の男がいた。男はクラウンだった。そこまで歩こうとしたら、歩く前に僕はその男の横に移動していた。向こうが移動したのかもしれない。
「いつものアレは?」
「君にはもうアレは必要ないんだ。そして、私の事もね。」
クラウンはそう言うとスーツケースを抱えて立ち上がった。
「どこに行くの?」
「ここではない、どこかへ。」
クラウンはそう言い残すと、どこかに行ってしまった。

 目を醒ますと、朝だった。まだ少し喉に違和感があるけど、風邪はすっかり治っていた。体調が良くなったからあの夢を見なかったのだろうか。そのとき僕はそう考えていた。けれど、あれ以来どんなに風邪をひいて、どんなに熱を出しても、あの夢を見ることは無かった。

 これを読んでいる人の中に、3年前から同じ夢を見始めた人はいませんか。

広告


この記事の評価は:

うーん…いまいち…ふつうですかなり良い素晴らしい (まだ評価されていません)
読み込み中...

コメントをどうぞ

コメント
Follow me on Twitter