僕もたまには日記を書く

2002年2月2日 土曜日

 帰り道、終電の中は満員だった。
 僕の目の前には、疲れてるんだか酔ってるんだかわからないが、とにかくぐんにゃりして、吊革につかまって目を閉じている会社員風の中年男性がいた。小脇には書類のファイルを抱えていた。
 僕はそれを見て、ああ、毎日仕事が大変で疲れてるんだろうな、と思った。それからふと、「10代の頃だったら、オッサンが立ったまま寝てるなあくらいにしか思わなかったのかもな」と想像してみた。ひょっとすると、これもまた大人になるということなのかもしれない。

 僕は彼に席を譲ってあげようと思った。駅に止まった所で、降りる風を装って立ち上がり、軽く彼に体当たりをして目を開けさせ、座ってもらう心づもりだった。
 しかし、僕が席を立つが早いか、違うオッサンが素早く座ってしまい、僕はただ彼に体当たりをかましただけだった。
 しょうがないので、僕はそのまま電車を降り、隣りの車両に乗り直した。

 僕の降りる駅に着いた。終電車から吐き出された人間は、皆一様に疲れた顔をして家路を急ぐ。
 後ろから、「カチ…カチ…カチ…」という音が聞こえてきた。振りかえると、男性が電子ライターで煙草に火をつけようとしていた。風が吹いてるからか、ガスが切れているのか、なかなか点かないようだ。
 僕はポケットの中で自分のジッポーライターを握りしめ、どうしても点かないようだったらこれを貸してあげようと思い、歩を緩めた。
 「カチ…カチ…カチ…。…カチ…カチ…」
 どうにも着かないようだ。そこでとうとう僕が後ろを振り返ったとき、ちょうど火が着いた。

 僕の思った事は誰にも届かなかったけど、別に構わなかった。僕は自分の煙草に自分で火をつけると、自分の家へ帰った。

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