チャイムが鳴るまで

2002年5月19日 日曜日

 5月6日の続きです。

 さて、「理想の読者像」なんてものを考えて来ましたが、それに対して誤読者という存在が論じられて来ました。これは、作者の意図と明らかに対立する読み方をしてしまう読者の事。念の為に言っておくと、作者の意図と読者の読みと、どちらが正しいとは一概に言えない、というのが前回の結論。
 しかし、それを頭で解ってはいても、あまりに非道い誤読を前にすると作者はさすがにゲンナリしてしまう。
 例えば、99式を例に取りますと、13日付け「頑張れ中国」。これに対して誤読者から誤読メールが届きました。
 メールは晒しませんが、いきなり「この非国民め!」と宮本が罵られております。中共シンパや北朝鮮工作員の破壊メールかな?とすら思った。それで最初は何言ってるのか全然解らなかったんだけど、どうやら「反日国家を応援するなど、日本人の皮を被った非国民だ!」と真っ向から糾弾している様子。裏の意味とかネタとか無さそうです。なんと日本近海に北朝鮮の不審船が来ていた事や、ちょっと前にミサイルが日本上空を通過した事を教えてくださいました。僕に対して。「平和ボケしたアホ」とかも言われてしまった。笑える。この、大東亜共栄圏の再建を夢見る国粋趣味的右翼ファシストの宮本勇次郎が、平和ボケ。萎える。
 これは誤読というか、正反対の読みでしょうか。反読者。最後の一行しか読まなかったのかなあ。(説明するまでもないと思うんですけど念の為に、あれは反日国家の活動が活発になる事によって、「平和ボケ」した平和な日本人の意識改革が促進される、と。つまり、反日工作激化によって有事法制の整備や憲法改正がしやすくなり、再軍備化や正当な国民教育もやりやすくなる、というシナリオを念頭に置いた、この上なく解りやすい右翼ネタだったわけですが。解説してて萎える。)

========
 さて、続けます。理想の読者とは別に、同時代の読者というのが存在します。これは4月30日でも少し触れた事ですが、そのテキストが書かれた時にリアルタイムで読む場合と、過去ログとして後から読む場合とでは、解釈も意味も違ってきます。
 これをハンス・ロベルト・ヤウスは、「期待の地平」という言葉で説明しました。「期待の地平」とは、ある特定の時代の読者がテキストを判断するときの基準のことです。「期待の地平」は時代により変化するので、時代が変われば解釈も根本的に変わります。期待が維持される場合、その読みは旧パラダイムに属し、期待が破壊される場合には新パラダイムを作ることになります。
 (99式を例にとると、一番解りやすいのは例のフォント弄り週間「快楽亭ブラックのファニーヘーマーズゲブン」です。あれを今のパラダイムに属して読むのと、当時リアルタイムで読むのとでは全く違います。)
 他にも誤読者の存在とか、ウォッチャーや論敵や801読者など、色々な読者のモデルが想定できますが、その全てを把握するのなんてのは到底無理な話です。

(つづけ)

広告


この記事の評価は:

うーん…いまいち…ふつうですかなり良い素晴らしい (まだ評価されていません)
読み込み中...

コメントをどうぞ

コメント
Follow me on Twitter