かわいい夢がある(叶えたい) ~ミカの脱退によせて

2004年5月11日 火曜日

(多分、現時点でミカ・トッドに対して最も誠実に、最も熱意を持って書かれたネット文章。あと、長い。)

 5月2日をもって、ミカはミニモニとココナッツ娘を脱退し、音楽の勉強をするために渡米した。今まで何人もの少女がハロプロから去っていったが、これほどポジティブで真っ当な理由による卒業はなかったのではないだろうか。

VALENTIの一番最後のサビの、♪~輝くチャンスをあげてMy dream…のフェイクの部分がなっかなかうまく歌えなくて、アドバイス教えてもらいたいんですよね

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(2003年11月、Mステにて、タモリに「ミカはどんなアーティストの歌を歌うの?」と聴かれ、隣に座っていたBOAに)

 他のメンバーが、カラオケで何を歌う、モノマネをする、などの可愛らしい話題に終始するなか、唐突に隣のBOAにぶつけた質問である。完全に場がしらけたが、空気読め、とすら言えない本気がそこにあった。まずいな、と僕は感じた。MIKAはどうやら歌唱力絶対主義に陥っているようだ。それは、かつて保田圭がとらわれた陥穽でもある。アイドルにとって歌唱力はどうしても必要なものではない。そりゃぁうまいに越した事はないが、仲居くんや石川さんのように、音痴でも他にお釣りが来るくらいの魅力があれば、十分やっていけるのである。しかし「他に魅力が」ないメンバーは何をすればいいのか、と言われると、ハタと困ってしまうのである。アイドルグループの、不人気メンバーが最後にすがりつく拠り所が歌唱力であり、そこでなんとか「このグループに私は必要」と自分に言い聞かせるしかないのだ。

 これは、2003年の11月に「今月の言葉」として取り上げようとして書いたまま、没っていた文章である。

 今にして思えば、これは立派な伏線だった。おそらくMIKAは、ただ単に歌唱力の幻想にすがりついていたのではなく、本気で歌に取り組もうとしていた。するとこの頃から、MIKAの中での音楽追求の夢はほぼ固まっていたと見ていいだろう。

 僕は今まで、MIKAの卒業というのは、つんく♂が書いたシナリオだと考えていた。おそらく、僕だけではなく、これが大方の捉え方だったようにも思う。辻加護W[ダブルユー]のデビューにより、その役割を終えたミニモニを終了させると同時に、ていのいいリストラをしたのだろうと。ところが独自の調査と推理の結果、それが間違いであったことが判明した。我々は大きく見誤っていた。MIKAは本気だった。ミニモニ。じゃドキュメンツの演技があまりに台本であったために、余計に勘違いしていたが、あれがあくまでもドキュメントドラマではなく、再現ドラマであったことを考えれば腑に落ちる。

1.MIKAの家庭

 MIKAの家は、実は知る人ぞ知る芸能一家である。父親は有名なジャズ・ピアニストで、日本でもコンサートやCDリリースなどの活動を展開している。MIKAは幼少の頃からそんな父親から音楽と共に育てられたようだ。姉は幼い頃からハリウッドに憧れて何度もオーディションを受けていたらしい。そんな家庭環境に生まれ育ったMIKAが、日本でやっと手にした小さな成功、それがココナッツ娘だったのだ。

2.MIKAの夢

 しかし、すぐにミカはココナッツ娘の現実と限界とを知ることになる。鳴かず飛ばずのCD、次々と夢を諦め、ハワイに帰っていくメンバー。そんな中、MIKAが手にした生涯最大のヒットが、ミニモニというプロジェクトだったのだ。しかし、そこでMIKAを待っていたものは、己の限界だった。ミニモニにいる限り、MIKAは引き立て役であり、刺身のツマである。時にはいなくてもいいと白眼視されることすらあった。しかし、ミニモニを離れれば死に体のココナッツしかない。それになにより、ミニモニは楽しい。悩むMIKA。そんなMIKAを支えたのは、最後のココナッツ娘、AYAKAだった。

3.MIKAの決意

 そしてとうとうMIKAは、ハロプロを離れ、日本を離れてまっとうな歌手への道を目指すことを決意した。半年以上前から音楽に対して真剣に考えていたであろうことは、冒頭のMステ発言からもうかがい知れる。また、ミニモニのドラマ『ブレーメン』もMIKAの決意を後押ししたかもしれない。このプロジェクトが立ち上がったときにも、MIKAにはチョイ役しか与えられなかった。12話を4人で3話ずつ割れるところを、MIKA以外の3人が4話ずつ担当したのだ。MIKAは飼い殺しだった。「このぬるま湯にいる限り、これ以上の成長は見込めない」と彼女が考えたかどうかはしらないが、何よりも、『ブレーメンの音楽隊』という青春ドラマは、はみだし者の少女達が、不器用でもひたむきに努力して、己の夢を実現させるストーリーだったのだ

4.ココナッツの絆

AYAKA「ミカとはずっと今まで色んな話をしてきたから、ミカの気持ちを知っていたし、『行かないで』って言いたかったけど言えなかった。」

MIKA「アヤカとは本当に運命の出会いだと思う。」

5年前、ココナッツ結成当時からずっと活動を共にしてきた2人。辻&加護が陽の“運命の2人”なら、MIKAとAYAKAもまた陰の“運命の2人”だったのだ。

・参考音源:ラジオ『KISS THE COCONUTS!! 5月2日』

ハロプロのラストコンサートを終えたミカが出演した、最後のラジオ。

心臓の弱い方、涙腺のゆるい方はご注意ください。

1曲目が『情熱行き未来船』という時点ですでにヤバい。

AYAKAの手紙:

卒業が決まったとき、ミカとはずっと今まで色んな話をしてきたから、ミカの気持ちを知っていたし、自分の素直な気持ちをミカに伝えられなかった。もう、本当に、「行かないで」って言いたかった。

淋しくて、すごい、どうしたらいいのかわかんなくなった。でも、ずっとミカにこんなことを言うとミカがつらくなっちゃうと思って、言えなかった。

ロスに行って欲しくない。

でも、そんなことは、私のワガママだって……。ごめんね。でも、これからミカはロスに行って、2人とも違う道を歩むけど、何かあったら絶対私はミカの味方だよ。離れ離れになっても、一生家族だからね。おばあちゃんになっても、ココナッツ娘だからね。

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うーん…いまいち…ふつうですかなり良い素晴らしい (まだ評価されていません)
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コメント / トラックバック 2 件

  1. 匿名 Says:

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    yiye’s vanity world
    >ミニモニというフィクションの中の一つの記号としてではなく、初めてリアルな一人の人間として考えることが出来ました

  2. refst Says:

    ミニモニを愛した人全員に呼んでもらいたいと,ミニモニファンでない俺が思う文章.2004年ベストテキスト.

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