SAMURAI

2004年12月26日 日曜日

 映画について。僕はこの歳になって、突然悟ってしまった。どうやら僕にとって、映画とは格闘シーンが全てらしいのだ。それに比べれば、脚本やらテーマ性やらは二の次、三の次だったのだ。いい年して、中学生みたいな映画の見方でお恥ずかしい限りですが……。

SAMURAI』というフランス映画がある。と聞くと、アラン・ドロンの『サムライ』を思い浮かべる映画ファンは多いだろうが、本作は2001年に作られた、ジャパネスク・アクション映画だ。と聞くと、さらに『ラストサムライ』を思い浮かべる映画ファンも多いだろうが、本作は完全なる“カンフー映画”だった。

 あらすじはこうだ。

 500年前、戦に勝つために悪鬼を呼び出してしまった一族の末裔、藤原刑事は、「フランスにいるお前の娘が危ない」という先祖のお告げを聞き、単身渡仏する。そこに悪鬼の復活をもくろむ日本の組織も乗り込み、一触即発バトルに。果たして、転生した悪鬼の行方はいかに。また、組織が開発した格闘ゲームソフトに隠された謎とは…?

 これがジャケット。

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 ビデオ屋で最初にこれを見たときに「『ブレイド』のパクり?」と放り投げたのはもう半年近く前のことながら、再び見たらなんだか気になって借りてしまったのだ。最初はどうせフランス人の作った、インチキB級バカ映画だろうと思って、適当に流し見していたのだが、どんどん引き込まれてしまった。

 まず、格闘シーンが良く撮れている。フランスのキックボクシングジムに、日本から来たカンフー軍団が乗り込んで大乱闘をする、多数対多数の殺陣、日本刀を使ったチャンバラ、ラスボスとの鬼気迫る対決など、色々なパターンをおさえつつ、動き、殺陣、カット割のどれもが及第点である。特にチャンバラシーンは、フランス映画なのにとてもしっかりしていた。

 冒頭で「格闘が全て」と言ったものの、それ以外も良ければ良いに越したことはない。北村監督のように格闘シーンだけつないでもしょうがないし、『ドラゴン危機一髪』くらいにシナリオがクソだと全体がしょぼく見えるのも事実だ。

その点この作品は、刑事ドラマ的味付けや、キーアイテムの使い方やゲーム的演出などがうまくできていて、B級からバカに滑り落ちるギリギリのところで踏みとどまり続け、最後はA級に足が届きそうになりつつB級という、素晴らしいバランスに仕上がっていた。

 あと、脇役かと思って観てた藤原刑事がやけに強くてびっくりしたんだけど、よくみたらGメン’75でおなじみ、和製ドラゴンの倉田保昭だった。道理で。拳銃、トンファー、日本刀、撃つ、蹴る、キメるの大活躍だった。音楽は『イノセンス』の川井憲次だった。グッジョブ。ヒロインのアケミが明らかに中国人なのはちょっと寂しい。登場シーンで「君、日本人なの? 中国人かと思った」というようなセリフがあるが、残念。どっちもはずれだ。いやどっちも当たりか。ルーシー・リューよりは日本語はうまかったけど。

 日本で公開してもそれなりにヒットしたのではないだろうか。アクションやカンフーものの好きな人は、騙されたと思って1度レンタルしてみてほしい。アクションも素晴らしかったが、自分の嗜好を完全に意識させてくれた本作に礼を言いたい。いやあ、スッキリした。個人的には、『キルビル』の10倍燃えた。


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