ハンセン病を「らい」と

2005年1月11日 火曜日

 就任以来、失言失態続きの南野(のおの)法相が、またなんかやらかしたらしい。

南野法相が差別発言、ハンセン病を「らい」と 患者ら抗議」(朝日)

 これは非道い話だ。法相が「らい病患者は気持ち悪い」とか「らい病は伝染るから寄るな」とか言ったのだろうか! しかし実際に何があったかというと……。

 ・新年会のあいさつでらい病について言及した。

 ・言い換え病名の「ハンセン氏病」を使わなかったので抗議を受けた。

 ・謝罪した。

  たったこれだけのことである。療養所を運営する団体は「まず大臣を啓発する必要がある。正式な抗議も検討する」とずいぶん居丈高なコメントを吐いている。

朝日にいたっては、「差別的な響きのある「らい」という病名も法律からなくなった。01年5月に熊本地裁が「国の隔離政策は人権侵害だった」とする判決を出し、国の敗訴が確定した。」と鬼の首をとったかのように書きたてているが……?

 そもそもらい病とは、癩(らい)菌の感染によって起こる慢性伝染病のことだ。感染者は皮膚がただれて恐ろしい様相になる。(『もののけ姫』で、鉄砲を作る病人達がそれだ。)これが空気感染すると考えられていたため、国は隔離政策をとったが、それがらい病患者に対する差別の原因になった、とされている。ちなみにハンセン氏というのは、癩菌を発見した学者の名前だ。

 病名を言い換えれば問題が解決する、という思考も浅はかだが、この事件を「差別発言!」と書き立てる朝日も浅はかである。そんな風に書いているのは朝日一紙のみだ。百歩譲って「らい病」という言葉に「差別の響き」があるとしても、それを使ったことが「差別発言」になるのかどうか。

南野法相が差別発言、ハンセン病を「らい」と 患者ら抗議 朝日新聞

「らい」表現使い、南野法相が陳謝 産経新聞

南野法相、ハンセン病の差別表現繰り返す 読売新聞

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南野法相: ハンセン病言及時の「らい」発言で謝罪 毎日新聞

 一紙だけ明らかにトーンが違う。事実や記事内容を正確に伝えることよりも、意図的に事実をゆがめてでも扇情的な見出しにしようとしているのだろう。B級スポーツ新聞以下のセンスである。法相が新年度の予算案で、ハンセン病対策費を復活させるなどの取り組みをしていること(そのことをスピーチで触れた結果、墓穴を掘った模様)を全く書いていないのも、朝日だけ。

 ところで、実は僕は病名の言い換え事態は別にどうでもいいと思っている。今でこそ、天皇一代で変わる元号だが、昔は飢饉や戦争など、悪いことが続いたなどときにもリニューアルして厄払いをしていた。日本は言霊のくになので、音を変えて性質を変えようとする試みはわからないでもない。

 ただ、旧病名を“差別表現”として根絶する必要があるとも思えないし、意味をゆがめて「差別発言!」と言いつのる朝日の報道姿勢はよほど悪意があるし、問題だと思う。—–

ソース

南野法相が差別発言、ハンセン病を「らい」と 患者ら抗議

 南野法相が10日に島根県であった島根県議(自民)主催の新年会のあいさつでハンセン病について言及し、差別表現である旧病名の「らい」という表現を繰り返したことがわかった。法相は11日の記者会見で「人権を害する発言だった。申し訳ない」と謝罪。元患者らは「意識が低い」と抗議している。

 新年会には県議との個人的な関係で出席。「法務省は『らい』の問題の啓発に取り組んでおり、施設を視察する予定だ」などと話し、「らい」という言葉を数回使った。

 記者会見で法相は「看護職にあるときから使っていた表現をつい使った。差別にあたる表現との認識はあったが失念していた」などと釈明した。

 熊本県の国立療養所菊池恵楓園(けいふうえん)の太田明自治会長は「現場での様々な取り組みに冷や水を浴びせる発言だ。名称は大事な問題であり、まず大臣を啓発する必要がある。正式な抗議も検討する」と話している。

 ハンセン病をめぐっては、国が長年患者を隔離する政策を採り「怖い病気」との偏見を助長。その後、完治する病と分かり、96年に「らい予防法」が廃止され、差別的な響きのある「らい」という病名も法律からなくなった。01年5月に熊本地裁が「国の隔離政策は人権侵害だった」とする判決を出し、国の敗訴が確定した。 (01/11 12:12)
南野法相が差別発言、ハンセン病を「らい」と 患者ら抗議 – asahi.com : 社会


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