読書感想文(12) 探偵伯爵と僕

2005年2月25日 金曜日

探偵伯爵と僕

レビュアー: 宮本・ザ・ニンジャ
 夏休みのある日、ぼくは探偵伯爵と出会う。伯爵は夏なのにいつも黒いスーツ姿でヒゲを生やしていて、悪いやつを追っている。トランプを1枚残して友人が消えていき、僕の身にも危険が迫る。
 題材や装丁、挿絵や丁寧なルビは、あえて少年少女物のパロディとしてやっているのだろうと思ったら、実は“ミステリーランド”という、実際に少年向けのシリーズだった。しかし「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」と謳われているとおり、実際おとなになった僕でもじゅうぶん楽しめた。
“文章を書くのが苦手な小学生が、ワープロで記録した夏休みの日記”という体裁をとっているのだが、どうも小学生らしさの演出が過剰で鼻につくものの、丁寧に描かれているので安心して読める。ただ、僕が小学生の頃にこの本を読んだとして、果たして楽しめただろうか。最初こそ、探偵伯爵や秘密のアジトなど、いかにも往年の少年推理物っぽいドラマツルギーが散りばめられているものの、それらのメッキがだんだんと剥がれてリアリティに収束していくのが寂しいのだ。それとも当代の小学生は、そのくらいの現実を諦観する程度のニヒリズムは最初から持っているだろうか。
 伯爵のキャラクターや、エピローグの余韻は良い。
★★★☆☆ 

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