読書感想文(5)(6) きみとぼくの壊れた世界 / イリヤの空、UFOの夏

2005年2月5日 土曜日

きみとぼくの壊れた世界

 閉ざされた学園で殺人事件が起きる。犯人である可能性は主人公とごく近い5人に限られたが、果たして。というのが事件部分の内容なんだけど、事件の謎解きよりも、主人公の独白による「世界との関わり方」がおそらく主題と思われる。その辺が帯に言う「新青春エンタ」なのだろうか。

 基本的な文章作法、たとえば係り結びのねじれとか、ら抜きとか、変な横文字の使い方とかも気になるんだが、それも文章が高校生の一人称で進行しているので「わざと」と言われたら何も言えない。タイトルのためか、会話の人称が「君」と「僕」で統一されてるのも気持ち悪い。饒舌で皮相的な会話の掛け合いもアレだが、ひょっとすると気の利いた翻訳文体のパロディのつもりでやってるのかもしれない。

 それにしても登場人物設定がひどい。「きゃうん」とか言いながら抱きついてくる妹、幼なじみのスポーツ娘、巨乳の虚弱娘とか出てきて、ことごとく主人公に好意を抱く。で、ギャルゲーよろしく、脳内3択が出てきたりする。いや、わかりますよ、やりたいことは。別に「狙いすぎてて嫌い」とか無粋なことを言うつもりもありません。が、むしろ「“狙ってる”と思われることをあえて狙ってそれを面白がってる」ような小賢しさが鼻につきます。

 主人公の描写も鼻持ちならない。いつも冷静で理知的なフリをしているくせに中身は無くて、言動はエクスキューズまみれで病的なシスコンで…。あれ、同類嫌悪…!?

 いろんな意味で、読んでてひたすらツライです。(せっかく勧めてもらっておきながら……)

★★☆☆☆

俺、ライノベ向いてないのかなあ。というか、いい大人が読むジャンルじゃないんだろうな、やっぱり。と思ったら、次に読んだ本はなかなか良かったです。

イリヤの空、UFOの夏

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“北”のさる国と臨戦態勢になっていて、自衛隊が自衛軍に改称している、パラレルな日本が舞台。学校新聞の記者で、超常現象を追う主人公の前に現れた不思議な少女の正体は……。というお話。

 まず、文章がしっかりしているのが良い。情景描写もできていて、比喩も臭くなる寸前で効果的に使われている。人物描写もしっかりしていて、登場人物が魅力的に、いきいきと描き出されている。内気で奥手な少年と、無口でよく血を出す少女、サバサバしたお姉さんと、悟った風のある男、学校にシェルター、夏……。ということで、どうも例の汎用人型決戦兵器のアニメを思い出してしまう、というかひょっとしたら意識してるかもしれないけど、今年アニメ化されるということなので、榎本の声はぜひ山ちゃんにやってもらいたいところ。初めて続きを買おうと思わされたライノベ。さわやかなボーイ・ミーツ・ガールストーリーで、夏に読みたい1冊である。と。

★★★★☆—–


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