やぐちひとり

2005年4月15日金曜日

　矢口がひとりになってしまった。
　モーニング娘。の戦力として7年間、最前線でチームを引っ張ってきたムードメーカー、現リーダーの矢口は、その一代叙事詩には似つかわしくないくらいあっさりと、いなくなってしまった。4月14日をもって消えてしまった。公式サイトからもプロフィールが消えた。卒業会見や卒業コンサートすら催されない。いや、卒業ですらないのだ。公式発表には、ただ「モーニング娘。を辞し」と無機質な通告があるのみである。今までのように、“卒業”という美辞麗句で無理矢理にでもセレモニーにして昇華させることもかなわない。
　矢口真里は、もう2度とモーニング娘。として人前に出ることはなくなってしまった。

　矢口は、5月でモーニング娘。在籍期間最高記録を樹立するはずだった。オリジナルメンバーに憧れつつ、決して届かなかった矢口の努力が、違う形で報われるはずだった。本当のオリメンがひとりもいなくなった今、その心意気を受け継ぐ矢口が、“新しいモーニング娘。のオリジナルメンバー”になるはずだった※のだ。

　一体、どうしてこんなことになってしまったのだろうか。
　直接のきっかけは、写真週刊誌に熱愛報道をされたことらしい。ハァ？男性アイドルとの恋愛スキャンダルなら、つい先月も、同じUFA所属、ハロプロの松浦亜弥が抜かれたばかりである。その際のUFAのコメントは「友人の１人だと聞いている」という実に冷めたものだった。松浦も、コンサートのMCで「お騒がせしました」と言ったのみである。

　何年か前に、安倍もフォーカスされたことがある。相手は押尾先生で、「プレステをしてました」は2000年の流行語大賞もとった（嘘）。結局その後、事務所に別れさせられたとも聞くし、お咎めなしとはいかなかっただろうが、それだけの話だった。

　これに対して矢口である。矢口と言えば、元祖ニャンニャン写真。2002年にBUBKAにキス写真をスッパ抜かれたこともあるし、男関係の噂も耐えなかった。ギャル系の格好でセクシー路線をひた走る矢口が、またフォーカスされたからと言って、誰も驚かない。「また矢口か」で終われる話だ。イノッチのように「俺達付き合ってまーす」じゃいかんのか。矢口も「オイラのセクシービームのたまものっすわー」ぐらい言っとけばいいのではないか。

　それなのに、なぜここまで苛烈な処置を取るのだろうか。UFAは洛陽北部尉の曹操か。それとも、2回目だからダメなのか？ 10日に撮られて、15日に発売される雑誌の先手を取って14日に懲戒免職って、なんだその脊髄反射は。今日び、ネットでもこんなに短絡的な奴はいない。安倍のときも思ったが、とりあえず黙殺して、世間の反応を見つつじっくり協議、とかそういうオトナの対応は出来ないのか？大のオトナが。

　元来、芸能事務所は所属タレントを守るものである。スキャンダルは金を使ってもみ消したり、他の情報で取り引きをしたりして流出を防ぐ。とくにUFAグループは、人気が落ちたタレントでも最後まで手厚く遇する、面倒見の良い事務所と言われていた。それがこの仕打ち。陰謀説や妊娠説が唱えられるのも無理のない話だ。不自然すぎる。

　問題の記事を読んでみると、記者の突撃取材（死ね）に矢口はショック状態でほとんど喋れなかった、とある。ひょっとすると、その後本当に思い悩んだ末に、「辞める」という結論に達したのかもしれない。しかし普通だったら慰留するはずだ。

　僕は今、静かに怒っている。写真週刊誌に、腐れ事務所に、世の中の不条理に、イケメン俳優に。この怒りを矢口にまで向けたくない。しかし。
「ファンを裏切った」というなら、こんな風に全ての責任を投げ出していなくなることこそ裏切りではないのか。あなたの7年間はそんなものだったのか。後輩にまだまだ伝えたいことがあったんじゃないのか。生憎と僕は、「妊娠だったら祝福する」ほど人間ができていない。アイドルは生きる希望だ。アイドルは修羅だ！そんな生き方を選んだはずの人間が、人並みの幸せを求めてどうする。いや、求めてもいいけど、それは“やるべきこと”をやってからなんじゃないのか！ついこの間、