読書感想文(20)(21) 海辺のカフカ

2005年7月2日 土曜日

海辺のカフカ(上)村上春樹

レビュアー: 宮本・ザ・ニンジャ
 15歳になった日の朝、「僕」は呪われた宿命から逃れるために家を出ることを決意する。誰にも見つからない場所を探して少年が向かった先は、四国。猫と話せる老人ナカタさんの行く先もまた西。2人の旅路に60年前の事件、ジョニーウォーカーやカーネルサンダーズ、異界の入り口、それぞれの物語を紡ぐ糸、暴力と虚無とが混じり合い、徐々に少年の下に収束していく。
 村上春樹と言えば、デビュー作の『風の歌を聴け』に代表されるように、何者でもない等身大の「僕」が女性とうだうだして猫をごろごろして終わって、何も残さず、「僕」もまったく変わらない、いわゆる私小説風の小説が多い印象がある。(偏見)
 しかし今作は、特殊な舞台装置と奇妙な設定が現実感の中に効果的に配され、SF(ちょっとふしぎ)な物語として大いに楽しめる。『ハードボイルドワンダーランド』以来の快作。登場人物もみな魅力的だ。主人公に関して言えば、実際にこんな15歳がいたら嫌だけど。あと、いつも思うけど村上作品では猫に比べて犬が冷遇されすぎ。
★★★☆☆

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