あぜ道を歩く(3)

2005年10月20日 木曜日

 (前回からの続き)おそらく、バリ島を訪れる普通の観光客は、現地人がこのような暮らしをしていることなど思いも寄らぬまま、ビーチで遊んでディスコで踊ってお土産を買って帰っていくことだろう。そういう意味では、非常にいい経験になったと思う。師範のおっちゃんは非常にサービス精神旺盛な人で、秘蔵のオキナワンカラテ教本(ちゃんと沖縄空手協会発行の英語版)を見せてくれたり、部屋の扉に貼ってある、10年前の写真をきれいにビニールで保護してあるものを引っぺがして持ってきてくれたりした。(扉の前まで呼べばいいものを)

 やがて夕食の時間になった。僕はホテルで超高級夕食を予約してあったから帰ろうとしたのだが、彼らのもてなし精神はそれをよしとしないようで、サテアヤム(ヤキトリ)を少しご馳走になることにした。そしたら奥から出てきたのはMさん(に似た人)だった。(あぜ道を歩く(1)に登場)
「あーっ!Mさん!」
「あなたはあのときの!」
 そこで師範が「なんだお前ら、もう知り合いなのか。じゃあ宮本の席はMの隣な。」とか言う転校生フラグは立ちませんでしたが、Mさんは師範の嫁じゃなくて妹ということだったので、これはイケる!と思った。嘘。思わなかった。でもヤキトリはすこぶるうまかった。ピリ辛のつくねといった感じだった。

 しばらくすると、「ブモオーーーッ!!」という、エンジン音のような獣の咆哮のような音が聞こえてきた。と思ったら、家の中(庭)にドサーッと体調160cmはあろうかという豚が、マンガで見る獲物みたいに手足をしばられ、棒を通されて二人がかりで運ばれてきた。聞くところによると、明日から始まるヒンドゥー教の祭りで、しめて捧げて食べるそうだ。「ブギッ…フゴッ…!!グオォーーーッ!!」体の自由を奪われた豚は相当気が立っているようで、体を波打たせながら必死で吠えている。師範は「いいからいいから。あれはただの豚だ。気にするな」というが、気になってゆっくり話すどころではない。そういえば、普通に生活している日本人は、こんな状態になった「ただの豚」を生で見ることはない。

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