終電間際の電車の中で、喧嘩を見かけた。23くらいの若い男と、40歳くらいで口ひげを生やしてエレキギターを持った男が、つかみ合っていた。
「んだこの野郎!」
ドン!
お互いが相手をつかんで、体を入れ替えながら相手を壁に激しく叩きつけている。
「テメェ、降りろこの野郎!」
つかみ合いが始まったのが駅に停車するちょっと前で、40ギターマンが23を引き摺り下ろそうとしていた。23の服がみょーんと伸びていた。
「辞めましょう。ね?ね?」
良識ある通りすがりがなだめて両者を引き離した。40ギターマンは通りすがりに軽く頷いてそのまま下車して行った。23はその後姿に「ふざけんなジジイ!」「しね!」と悪態をついていた。
これを見て僕が思ったこと。どうせ喧嘩のきっかけなんて、足を踏んだの肩が触れたのくだらないことだろう。だっせぇなあ。いい大人がそんなことでつかみ合いなんてみっともない。
しかし、僕がもし当事者だったらどうだろう? おそらくつかんで引っ張って…なんてことをしている間に、いやもしされたら、2、3発打撃を入れてしまいそうな気がする。自衛手段として。
ただ、打撃技で相手を行動不能にしたときは、たいてい同時に傷害罪に問われる状態である。その点では打撃技に対して組み技は社会的優位にある。警察官が柔道を習うのも、昔の映画で柔道家が正義の味方で、空手家が悪役なのも、その辺りに理由があるのかもしれない。