物事の多面性について

2010年9月16日 木曜日

こんな動画が話題になっている、というニュース。

老人とケンカをして逆にノックアウトされてしまった若者の動画が注目を集めている。この騒動はバスの中で発生し、偶然乗り合わせた第三者によって撮影されたもの。

白人男性の老人とケンカをしたのは、いかにも強そうな黒人男性の若者。年齢にして18~23歳くらいだろうか? 動画を見る限り、お互いに文句を言い合い老人とケンカになり、老人は激怒して席を移動。しかし若者は男性を追いかけ、一発のパンチを老人にあびせた。すると老人は激怒。凄まじいパワーとスピード、正確な動きで若者にパンチのラッシュを喰らわせたのである。

単なる貧弱パンチなら若者も反撃できたかもしれない。若者は手出しできないままバスの床に転がったのである。若者がこの老人に勝てなかったのも無理はない。なぜならば、この老人はベトナム戦争で活躍したベテランのエリート帰還兵だったのだ。若者をノックアウトした老人は、プンスカと怒りながらバスを降りていった。ちなみに、若者は流血したが老人は無傷だったようである。
若者が老人とケンカして逆にボコボコ / 老人はエリート・ベトナム帰還兵だった – ロケットニュース24(β)

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どれどれ、と思ってみてみると、確かにバスの中で、見上げるような大男の白人が、黒人をボコボコにぶちのめしている。
老人が、殴りかかってきたならず者の若者を返り討ちにしたなら、それはそれで確かに痛快事である。

しかし、どうも違和感があるこの動画。
調べてみると、すでに町山智弘氏が『やじうまUSAウォッチ』で取り上げていた。4ヶ月も前に。
それによると、この動画の真相は…

黒人が数人乗り合わせたバスの中で
「ブラザー共は靴を磨くのがうまいってな」
「おまえはいくらでワシの靴を磨くんだ?」
等とでかい声で白人が挑発を始めた。
「何だって俺があんたの靴を磨かなきゃならないんだ!?」
と黒人が怒るのも無理はない。

「ワシは67歳だが、お前なんぞにワシを脅すことは出来ん!お前なんぞ怖かない!お前なんぞ怖かない!」
「何だと!?」
なおも執拗に続く挑発にキレた黒人が胸を小突くやいなや、白人は物凄い勢いで殴りかかった…。

というものだった。

しかもこの白人、

  • 67歳というのは嘘で64歳だった
  • そもそもベトナムには行っていなかった

というおまけつき。
しかも、黒人は別に若者じゃなくて、50歳だった。
3カ月間だけ英雄だったマザーファッカー | やじうまUSAウォッチ | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

この事件の詳細は、やりとりの書き起こしを含めて、このページでとても詳細に分析されている。
Epic Beard Man | Know Your Meme

真相が分かってからこの動画をもう一度見てみると、痛快なことなど何一つない。ただただ獰猛な白人の大男が、人種差別を元に弱者の黒人に暴行を加えているだけの陰惨な動画である。冒頭の記事では、「いかにも強そうな黒人男性の若者」と偏見を持った記述があるが、実際にはこの黒人は50歳の初老男性だった。

いや、たまらないね、全く。

これまでの価値観がひっくり返るような感触。
物事には常に多面性があって、我々が見ているのは、常にコインのどちらか片方でしかない。月は、自転しながら公転しているため、地球からは常に月の片面しか見ることは出来ない。

しかし、65億人が当たり前に見ている月のその裏側はどうなっているのか。みんなが当たり前に思って疑わない物事には、本当に違う見方はできないのか。

完全に裏側でなくてもいいけど、少しくらいは「当たり前」の面をずらしてみせることはできるんじゃないか。
僕はこのブログで、そういう日記を書きたいと思っている。


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