『自炊』という変な用語の呪われた成り立ち
前回、「そもそもデジタルデータじゃないから吸い出してないのになんで『すい』なの?」という疑問を呈した。
3.そもそも「吸って」ない
そもそも「吸う」というのは、CD-ROMやゲームのROMなど、焼き付けられいるデジタルデータを、再利用のために別の場所に保存する、という意味の俗語である。
書籍のPDF化の場合、別にもともとデジタルデータなわけでもなく、吸ってない。スキャンすることを「吸い出す」とは言わない。
しかし、その後Twitterで教えてもらった所によると、そもそもは“割れ物”、違法ソフト系の用語だったというのだ。
自炊 とは、どこかで手に入れた 「割れデータ」 をコピーするのではなく、自分で買うなりして手に入れたオリジナルのCDやDVDなどから直接自分でデータを吸い出しネットに流す (放流) することです。 言葉の成り立ちは 「自分で吸う→自吸い→自炊」 で、こうした行為を 「炊く」 なんて表現します。
元々は、ゲーム のROMカセットやCD-ROMディスクなどの電子媒体からのデータ吸出しを主に指していた言葉で、対象となっていたのはパソコン用のアプリケーションソフトウェアや映像・音楽、 ゲームなどの商用ソフトウェアなどでした。
しかし後には商業出版された雑誌や書籍のスキャナー利用による吸出し (本をバラして丸ごとスキャンで吸い出す)や、さらには 同人誌 などの吸出しも現れ、それらも同じように 「自炊」 と呼ばれます。 2000年代中期以降は、むしろこの使い方の方がポピュラーでしょう。
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つまりそもそも、データの『吸い出し』ありきで、それがのちに同人誌のスキャンからの流れで、書籍スキャンにも応用されることとなった…というのがこの変な日本語の呪われた出生の秘密である。
僕にしてみれば、恥ずかしいを通り越して、もはや若干気持ち悪いスメルの漂う用語なんだけど、それでも『自炊』は今後も使われていくのだろうか?