最強ホームレス棋士
2011年4月27日 水曜日
東京国際フォーラムの中を通って通勤している。
夜のフォーラム内部は、展示はすべて終了していて、ただ間接照明が着いているだけなのだけど、このライトアップされた館内が、まさに人工美の極致といった感じで、美しい。今は節電対策中のようで、最小限の照明しか着いていないのがちょっと残念だ。
ところでこの東京国際フォーラム内には、わりと座り心地のいいベンチがたくさんあって、近隣の浮浪者のたまり場になっている。せっかくの綺麗な建物なのに、朝晩薄汚れたオッサンの姿を見なくてはいけないのもちょっと残念ではある。
しかし、浮浪者にも色々な個性があるものである。ほとんどの浮浪者は、ただひたすらぼんやりと座って時間を潰している。しかしある浮浪者は、いつ見ても将棋盤に向かっている。ときには、仲間を相手に将棋をしている姿を見かけることもあるが、大抵は一人で詰め将棋をしている。きっと強すぎて相手がいないのだろう。
おそらく彼は、酒で身を持ち崩した元プロ棋士、もしくは闇の賭け将棋の棋士か……。
高度に発達した自我と、抽象的思考能力を持ってしまった人類は、無為な時間に堪えることができない。そういう意味で彼は、ここにたたずむ浮浪者達の中で一番人間らしい人間だろう。そしてまた、おそらくプロ棋士以上に将棋盤に時間を捧げているであろう彼の棋力を、いずれこの身で体験してみたい、と思った。
「僕と…一局指しませんか。」
パチリ、パチリ。
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「え…。あ、ハサミ将棋?」