「良いものを安く売る」のは悪徳企業

2011年5月17日 火曜日

日本製の子供服を、2000円以下という激安価格で売る子供服ブランドがあり、業績を上げているそうだ。

そんな中、快進撃で伸びてきている会社があるそうで。
それはMade in Japanの子供服ブランドです。

なんと、そのブランドさんの子供服はすべて2000円以下!
日本製でこの値段!!
そりゃ、みんな飛びついて買いますよね。
どうしてこんな値段で日本製の服が作れるのかというと・・・。

昔から繊維産業として発展していた地域がありまして、
そこでは現在でも、ある日本製のアイテム縫製を70%もしめている地域です。
  (略)
そこで働いていた「主婦の職人さん」に内職として縫製をしてもらっているのです。
  (略)
定価2000円弱。
  (略)
どう考えても、縫製工賃としては500円以下・・・。

番組では、この内職主婦さんたちの縫製の技術にも注目していたようです。
元々は何十年も縫製工場で働いていた人たちです。
  (略)
話は戻りますが、この子供服ブランドさん。
「主婦の内職だから、この価格で出来るんです!」とのこと。
アパレルの裏事情

こういう商売の仕方は、いろんな意味で感心しない。
あまりこういう左翼的、マルクス史観的な表現を使いたくはないが、これは資本家による労働力の搾取、以外の何物でもない。

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適正な価格と利益は企業の使命

日本の代表的な人格的経営者の一人に、松下幸之助がいる。
彼は、商売と価格について、こんな言葉を残している。

私は経営を公明正大にやってきた。いかなる商品も売れるからといって不当な利益をむさぼったこともないし、この価格が適当適正だと考えたものについては安易な値引きをすることもしなかった。

適正な利益というものは、企業の使命達成に対する報酬である。だから、利益なき経営は社会に対する貢献が少なく、その本来の使命を果たしえていないといえる。

金儲けせんほうがええとか、安い賃金で働けとか、あるいは、安いものを売れとかいうようなことを言って、お互いに金儲けのしにくいことを奨励するのは、貧困街道を走らすようなものである
松下 幸之助の名言集

日本の労働市場というのは、単純なコスト比較では安い海外の労働力に全く太刀打ちできない。日本の活路は、徹底した合理化や職人芸、オートメーションによって、少ない人数でより多くの生産量を確保する(量で勝負)か、高い品質や機能などの高付加価値によって、高くても売れる商品を開発する(質で勝負)かのどちらかにしかない。

理由もなしに、「安くて良いもの」を売ってはいけないのだ。それは、回り回って社会全体が我慢比べで貧乏になる道である。

クソ労働環境が止まらない

しかし、どのように批判したって、自分の会社が儲かっている以上、この社長には馬耳東風だろう。
対抗手段は一つ。
この主婦職人たちに倍の賃金を払って、倍の値段で売るブランドを誰かが立ち上げればいい。倍だったら売れない? そうかもしれないが、他社が倍の賃金をだすとなったときに、わざわざ半額の賃金で働こうとする人はいないだろう。この会社の商品供給は不可能になる。あるいは、適正な価格は3倍かもしれないし、1.5倍に落ち着くかもしれない。
しかしいずれにせよ、競争原理が働いた結果としての適正な価格に落ち着くだろう。こんな女工哀史のようなやるせない話は、昭和時代までにしておいてほしいものである。

ある意味で女工哀史よりもこの話がやるせないのは、どうやらこの主婦達がそれなりにこの待遇、仕事を楽しんでいるらしいこと、専門的技能を持った人が「主婦」というだけでまともな職人扱いされなくても納得してしまう、させられてしまうこの社会のありようである。

「良いものを安く売る」、「給料が安くてもがんばって働く」というのは、いいことでも何でもない。良いものは、高く売らなくてはいけない。そうしないと、日本の経済も労働環境も生活水準も、どんどん悪くなっていく。


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