「清潔で安全な日本社会」という前提を疑おう

2011年5月1日 日曜日

福井、富山の焼き肉屋で生肉料理(ユッケ)を食べた男児2人が、病原性大腸菌「O111」による食中毒で相次いで死亡するという痛ましい事件がありました。(他にも計48人が食中毒症状を訴えている)
亡くなった男児は本当に気の毒なことだと思いますし、安易に加熱用の生肉を提供していた店側の責任、および卸業者の責任は追及されるべきだと思いますが、これってそれだけの問題でもないんですよね。

これは大きく分けて、二つの大きな問題、教訓をはらんだ事件だと思います。

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水と安全はタダ…ではない?

まず第一に、日本人は、日本国内ならなんでも清潔で安全だ、という認識に慣れすぎてしまっていないか?ということ。

日本の製品、食品は、その生産者および流通社の高い職業倫理に支えられて、世界に類を見ないほどの高い安全性と品質を兼ね備えています。これは一般論です。
しかし、それが当たり前になってしまっているがゆえに、いざ問題が発生したときに思わぬ脆さを露呈します。
今回の食中毒事件だって、食べた人は「これまで大丈夫だったから」、出した人は「業者がアルコールで消毒しているから」くらいの曖昧な意識でいたから起きた事故でもあります。
原発の事故を見ても、現場の消防職員や自衛隊の高い士気とプロ意識には頭が下がりますが、
東電役員や保安院、政府には職業倫理も安全意識もあまり感じられません。

生肉は人間の食べるものではない

第二に、最近の日本人の生食と冷水志向はちょっと度が過ぎるんじゃないか、ということです。
まあ冷水については話がちょっとズレるのでおいておきますが、まず、そもそも食品を生で食べるのはリスクが伴う意識だ、という意識があまりに希薄な人が最近増えているのではないでしょうか。
生で食べてもいいのは、果物と一部の野菜、そして本当に新鮮な魚くらいのもので、生肉を喰らうなんていうのは人間の行為ではありません。肉食獣の捕食行為です。

ある医師はこのように指摘しています。

生肉には100%食中毒菌がいると考えなくてはならない。これは大げさな表現ではなく、常識的な見解である。最近、子供にまで生肉を食べさせて、食中毒になるケースも多い。生肉には病原性大腸菌、カンピロバクター、サルモネラなどの食中毒菌が付着している。生で食べるなど言語道断である。
(中略)
生肉を食べることは、目隠しをして、道路の真ん中をフラフラ歩くのと同じである。いくらおいしい(?)からといって、「ユッケ、レバ刺し、鳥刺し」などの生肉を食べてはならない。我が子に薦めるなど、もってのほかと言うしかない。ついでに、生卵も。

三宅小児科のブログ  鳥わさ

そもそも、恐ろしいことに厚生労働省が出した基準をクリアして、生で食べても良いとされたのは馬肉と一部のレバーだけなんです。(馬の筋肉は牛より体温が高いので、寄生虫がいる可能性が少ないというのもあるらしい(@熊本県畜産協会))
そのほかの牛肉なり鶏肉なりを生で食べさせる店があったとしたら、それは「国の安全基準を満たしてはいないけど、多分大丈夫」くらいの意味で出されているものでしかありません。

1 お肉は生で食べると、食中毒になることがあります

とりわさ、レバ刺しなどによる食中毒の原因菌である「カンピロバクター」や「腸管出血性大腸菌(O157など)」は、少量の菌で食中毒を起こします。新鮮であっても、菌が付いている食肉を生で食べれば、食中毒になる可能性があります。

2 子どもが食肉を生で食べると、特に危険です

カンピロバクターによる腸炎は、子どもに多く発生します。また、腸管出血性大腸菌(O157など)による食中毒では、合併症で溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症する率が子どもにおいて高く、腎機能障害や意識障害を起こし、死に至ることがあります。子どもも含めて、カンピロバクターによる食中毒の後、手足の麻ひ、呼吸困難等を起こすギラン・バレー症候群を発症することがあります。

3 「生食用」の牛肉、鶏肉は流通していません

厚生労働省は、「生食用食肉等の安全性確保について」の通知で、生食用食肉の衛生基準を示していますが、平成20年度にこの通知に基づいた生食用食肉の出荷実績があったのは、馬の肉・レバーだけでした。牛肉については国内と畜場から生食用としての出荷実績はなく、一部生食用として輸入されているものがありますが、その量はごく少ないものと考えられます。また、鶏肉は生食用の衛生基準がありません。したがって、牛肉、鶏肉は、生で食べると食中毒になる可能性があります。 ちょっと待って!お肉の生食|「食品衛生の窓」東京都福祉保健局

それでも生食を強行するとたら、それは死と食中毒のリスクを織り込みずみで、「自己責任」でチャレンジするものと思ったほうが良さそうです。

無責任なテレビから自分と家族の身を守ろう

あと、許し難いのはこういう人命軽視の下衆なテレビ屋ですね。

阿吽の呼吸で「加熱用」がナマで

「これでユッケ食べる人減っちゃうかもわかんないですね」と司会の小倉智昭が話を振ると、コメンテイターの夏野剛・慶応大学特別招聘教授は「我々、長く食べてきているものなので、あまり恐れず。きちんとしたお店ならちゃんとなってるのでは。これでまた過剰反応してみんな一切食べなくなるのはおかしい」と『風評被害』の防止を訴えた。

食べる人減っちゃう

同店では「加熱用」の肉をナマで出していたといい、オグラは動機について「ナマ食用のお肉だと若干高くなるんで、加熱用のものを使っちゃったのかも」と経済な理由があったものと推測した。

ただ、番組外の報道によれば、そもそも厚労省が定めた生食用基準を満たすユッケなどはほぼ皆無で、業者・小売りの阿吽の呼吸のもと、「加熱用」の肉がナマで供されるのが常らしいという。

「焼肉店食中毒」厚労省基準満たすユッケ少ない? : J-CASTテレビウォッチ

韓国料理の生肉食を「我々、長く食べてきている」とか大嘘ですし、そもそも「きちんとしたお店」がどうこうではなくて、厚労省の基準を満たす安全な生肉が存在しない、という話なのに、それを食べないのがどうして「過剰反応」で「風評被害」なんでしょうか。立派な大学教授(特別招聘)ですこと。
「ナマ食用のお肉だと若干高くなるんで、加熱用のものを使っちゃったのかも」
の発言に関しては、開いた口がふさがらないですね。焼き肉屋さんの経済的事情は、幼子の命に優先する、と?

まあとにかく、命が惜しいまともな人は、韓国式焼き肉屋で生肉なんて食べないことです。もちろん、子供には絶対だめです。


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うーん…いまいち…ふつうですかなり良い素晴らしい (3 投票, 平均値/最大値: 4.33 / 5)
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コメント / トラックバック 1 件

  1. sora-papa Says:

    "生肉を喰らうなんていうのは…肉食獣の捕食行為です" "生肉には100%食中毒菌がいると考えなくてはならない。これは大げさな表現ではなく、常識的な見解である" まあ、そうだよな。

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