2002年4月某日 たのしいリンク論

●リンクって?

 インターネット上にあるサイト同士は、必ずつながっている。この仕組みをリンクといって、どこのサイトにもある「リンク」というコンテンツがそれだ。ここをクリックしてみると、色んなサイトの一覧が並んでいるはず。何でこんな仕組みがあるかっていうと、そもそもネットという大海に独りぽつんとサイトを始めても、そのままでは誰も見てくれる人がいない。これじゃ無人島で一人生活するようなものだ。そこで、友達に教えたり、他のサイトの掲示板に書きこんだり、リンクでつながったり…と、島に電話線を引くような作業が必要になってくるわけだ。だって、せっかく書いている日記を誰にも見てもらえなかったら寂しいからね。
 と、ここまではテキストサイトに限らずとも、どんなサイトでも共通の話。だけどここからがちょっと違う。例えばインターネット入門の本なんかを見てみると、大抵「相互リンクでお客さんを増やそう!」とある。相互リンクというのは、お互いがお互いのサイトをリンクしている状態のこと。そりゃぁ人気サイトにリンクしてもらえれば読者は増えそうだけど、ちょっと待った。テキストサイト地方には、独特のローカルルールがあって、相互リンクはタブーなのです。

●リンクのローカルルール

 人気サイトに「良ければ相互リンクしてください」なんてメールを送るのはもってのほか、「リンクしていいですか?」というのも必要ない。テキストサイトのリンクってのは、大抵その人が好きなサイトを選んで勝手に貼っている。
「でも、メールで報告しなきゃ、リンクした事に気付いてもらえない…」と思うかもしれない。でもそれは全く心配無用。ほとんどのテキストサイトはアクセス解析という便利アイテムを装備していて、どこでリンクされているか、そのサイトから何人来たか、と言った情報を知ることができてしまうのだ。
 これがあるお陰で、管理人はわざわざ報告を受けなくてもどこにリンクされているかが解る。だから、もしもこっそり悪口を言おうとしても、リンクしてあったらバレてしまう。かと言って、リンクを貼らずに悪口を書くと、チキン呼ばわりされてしまう。それをキッカケに、野次馬監視の中でバトル状態!になったりもする。そんなちょっとめんどうくさいけど、考えようによってはさっぱりとしたリンクルールでもある。
 なんでこんなローカルルールが出来たかって言うと、まず相互リンクにはキリがないから。考えても見てほしい。どんなサイトとでも相互リンクをするようになったら、人気サイトのリンクページなんてあっというまに電話帳のようになってしまう。もう1つの理由は、リンクも1つのコンテンツだから。ってのはつまり「サイトは自分の作品だ」という考え方で、リンクにも日記と同じように「自分」をしっかり反映させたい、面白いと思ったところにしかリンクしない、というテキスト者たちのこだわりだね。

●コミュニティとしてのリンク

 それぞれが自分の好きなサイトに好き勝手リンクをしているということは、そのサイトのリンクページを見ればその人の価値観がある程度わかるということになる。ひょっとすると、「アバウト」という自己紹介ページを見るよりもある意味その人の紹介になってたりもする。「リンクはアバウトほどに物を言う」ってやつで、もっと良く見ると、その人の交友関係や活動範囲なんかまでわかっちゃう。この人とこの人は仲がいい、この人達は面白い、このサイトは色んな所でリンクされているから有名サイト…。そんな具合だ。仲の良いサイト同士は、リンクページじゃない所で突然リンクを貼ったりもよくする。こうやって日記の文中でリンクをはることを、「文中リンク」という。これはオフ会の日記で登場人物紹介として使ったり、ネタとして友達をイジったり、私信を書くのに使ったりするためのもの。たまに悪口を書いてケンカを売るのにも使われたりもする。(相手が応じると、公開ネットバトルになる)
 そうして見ていく内に、人気サイトを中心としてコミュニティのようなものができているのに気付くと思う。この種の自然発生的コミュニティは、○○系、○○ファミリー、○○周辺という風に呼ばれたりもするけど、好きな人同士で集まっているから、似通ったタイプのサイトであることが多い。オフ会を開いても、結局来るのは同じコミュニティの人達だけだったりするのが普通。


●リンクという文化

 侍魂以降、右も左もわからない初心者サイトが雨後のタケノコのように量産されたので、そういうテキストサイトの「お約束」がわからない人が増えて混乱が生じた。まぁ、どっかに入門書があるわけじゃないし、教えてくれる人もいないだろうからしょうがないと言えばしょうがないんだけど。そういうのは多分、「空気を読む」って感じで自然と身についていくものだったんだろう。侍魂現象による人口爆発の前は、それでも良かった。偶然迷いこんだテキストサイト村で、2個3個サイトを読んで行く内に、なんとな〜く理解できただろうから。ところが今はそうはいかない。侍魂以降のサイトが空気やリンク文化を身につけないまま大手サイトになって、そのサイトにまた影響を受けるサイトが現れたりもしているからだ。新しく始めたサイトでも、メガヒットサイトにリンクを貼ってもらえば、一夜にして大手サイト!権力を手にしてしまうという「掘り出し現象」があちこちで発生している。大手サイトがどうして権力を持つかというと、今度は自分が新興サイトや弱小サイトにリンクを貼って、影響力を行使する事ができちゃうからだ。大手サイトにリンクを貼られるというのは一種の太鼓判みたいなもので、「あの有名サイトがリンクするくらいだから、きっと面白いサイトなんだろう」というイメージを与える。
 でも今はそういう大手サイト自体の数も増えて、コミュニティも多様化しているから、さながら国際社会のようになっている。異文化と異文化の衝突ってわけだ。で、そんな異文化コミュニケーションを通して、テキストサイトのリンク文化もしっかり復活している。これを読んだ皆さん。初めて見るサイトは、プロフィールと同時にリンクを見ると解りやすいですよ。それから、自分でテキストサイトを始める時は、アクセス解析と、ちょっとした気遣い、リンクのページをお忘れなく。
2003年 2月掲載

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