生肉のリスクを把握して食べていた人がどのくらいいただろうか?

2011年5月3日 火曜日

生肉を食べる風習というのは、昨今の韓国料理とかホルモンとかのB級グルメブームなどを背景に、グルメな現代人の間で広まっていたようである。

はてなブックマークのグルメカテゴリでも、定期的に評判の店のレポートがあがってきたりする。

生肉の人気記事

[N] 「やっちゃん」生肉が異常にうまい居酒屋(江古田)

この鮮やかな色を見て頂ければ、美味いのは間違いないと思って頂けるのではないでしょうか。

で、それに対して注意喚起のコメントがつくこともある。

tetzl food うまそうなんだけど、良い子と良いお年寄り、良い病弱な人は生肉くっちゃだめだよー。新鮮=安全とはかぎんないからねー。 はてなブックマーク – [N] 「やっちゃん」生肉が異常にうまい居酒屋(江古田)

レバ刺しの人気記事

レバ刺しの人気記事もある。

@nifty:デイリーポータルZ:気になるレバ刺しを、レバ刺し好きと食べ歩く

そういうわけで、無類のレバ刺し好き達と、おいしいレバ刺しの食べ歩きをしてきました。
今夜はレバ刺しの夢にうなされてください!

これに対しては、注意喚起の記事が書かれている。

レバ刺しには食中毒リスクがあります(タイトル変更しました) – 食の安全情報blog
デイリーポータルZのレバ刺し食べ歩き記事が多くのブクマを集めているようです。ブクマコメントの多くは「おいしそう」「たべたい」という内容がほとんどですが、皆さんレバ刺しが危険な食べ物だって知ってますか?

注意喚起は足りているか?

しかし、これまでの経緯や風潮を見るに、注意喚起は全く足りてない、と言わざるを得ないだろう。

以下は、こうした「生肉の人気記事」→「注意喚起を促すコメント」の流れが我慢できない、生肉好きの人の匿名ダイアリー。

■生肉エントリあがるたびに衛生注意をうながしたがる奴って何なの? 2010-02-02
(略)
で、こういうエントリで必ずと言っていいほど付くブコメが「食中毒への注意喚起もしてよっ」ってブコメ。
ケツの穴が小さいのは重々承知なのだが、こういうブコメをみるとイラっとしちゃうんだよなぁ。
(略)
生肉にあたりやすい人⇒おれ食えねー
生肉にあたりにくい人⇒食いてー
って感じだと思うのね。
わざわざ注意する必要なくね?

もちろん生肉初体験の人もいるだろうけど、そういう人だって食べてみなくっちゃわからないわけだし。
初めて食べるからには、そういうリスクも多少意識しながら食べるわけでしょ?
ってことは、わざわざ注意する必要なくね?

生ものってさ、もちろん刺身だってそれなりにリスクがあるわけじゃん。
あたりにくい人だって、あたるときはあたっちゃう。
みんなそれわかってて食べるわけじゃん。
わざわざ注意する必要なくね?

(略)
だってエントリは単なる日記じゃん。
生肉食ってきたよ~、うまかった~、行きたい人がいたらいってみたら~、そんだけじゃん。
そこになんで衛生管理の喚起が必要なの?わざわざ注意する必要なくね?

id:tetzlとか電車とってる外人の写真撮ってるけど、「ホームから落ちる危険があるので注意してね!」って書かなくっちゃいけなくね?

生肉エントリあがるたびに衛生注意をうながしたがる奴って何なの?

どうして「注意する必要なくね?」になるのか、支離滅裂で全くわからないのだけど…。いったいこの人は、当時どの程度生肉食のリスクを知っていたのだろうか。

刺身のリスクと、電車のリスクと、生肉のリスクは、それぞれ全く違う。

刺身は、寄生虫や腸炎ビブリオのリスクはあるが、回避しやすい(寄生虫は目で見える、噛むと死ぬ、腸炎ビブリオ菌2001年の基準改正で激減 *)上に、死ぬほどの症状になることはまれである。

電車のリスクは、目で見るだけで「あ、こんな巨大な鉄の塊にぶつかったら死ぬ」というのが誰でも分かる。実際に人身死亡事故も多く起きている。

しかし、生肉のリスクは分かりづらいのだ。
そもそも、日本では生肉を食べる食習慣はあまり一般的ではない。その証拠に、家で生肉を食べる人というのはほとんどいないはずだ。大抵は、焼き肉屋、ホルモン屋など、特別な店で食べる料理として食べている。
その理由は、スーパーで、生食用の肉が売られていないからだろう。
しかし、そういう専門店なら、新鮮な生食用の肉を特別に仕入れて出している。そう信じていたのではあるまいか。

かくいう僕も、江古田『やっちゃん』には一度連れて行ってもらったことがある。確かにうまかった。
しかし、それが生食用として流通している肉ではない、ということは知らなかったし、そもそも生肉を食べると死ぬかもしれない、という覚悟も知識も全く持っていなかった。
おそらく、今回亡くなった人々も、まさか自分が生肉で死ぬとは夢にも思わなかったはずである。

生肉食の危険性は、いくら強調してもしすぎることはない。
これは、件の逆ギレ社長ではないが、行政が法律で制限を加えた方がいいのではないか。

それにしても、どうして今回、ここまで大規模かつ深刻な食中毒症状が発生したのだろうか。
皮肉なことに、この国ではこうして人命が失われるほどの被害が出て初めて、ようやく危険性が認知される。
原発もそうだった。本当は事故が起きてからでは遅いんだけどね。

広告


この記事の評価は:

うーん…いまいち…ふつうですかなり良い素晴らしい (4 投票, 平均値/最大値: 3.75 / 5)
読み込み中...

コメントをどうぞ

コメント
Follow me on Twitter