電通女性新入社員の過労死事件に思う 本当の労働時間はどのくらいか?

2016年10月9日 日曜日

電通の若い女性社員が過労死するという痛ましい事件がありました。まぁ電通やワタミのような黒光りするブラック会社で過労死が起きるのは、今に始まったことではないのですが、こういう、組織が個を文字通り圧殺する事件に触れたときに僕が感じる気持ちも毎回変わらないし、慣れることもない。それは熾火のようにいつまでもあかあかと燻り続ける静かな怒りの感情だ。

しかし今回の事件が、これまでに起きた過労死事件と大きく違うのは、被害者がTwitterをやっていて、顔出し実名(名前のみ)で頻繁に仕事の愚痴と心のSOSをつぶやいていたことにより、過酷な奴隷的勤務の実体が明らかになった点です。

「おお しんでしまうとは なさけない」

どこかの大学教授が、Facebook(NewsPickに連携)で

「自分が請け負った仕事をプロとして完遂するという強い意識があれば、残業時間など関係ない」
「自分で起業した人は、それこそ寝袋を会社に持ち込んで、仕事に打ち込んだ時期があるはず」

などと曰って、盛大に炎上してましたが、そりゃ炎上するよ! ここまでいくと普通、酔っ払ってても自生するレベルの非道い投稿です。実際に死人が出ている過労死事件で、被害者叩きって正気の沙汰ではない。
しかも「起業した人は泊まりで仕事をしたはず」って、これワタミの社長もよく言ってた寝言なんだけど、起業家と被雇用者を一緒にするなよ! そりゃ起業した人は、自分で実現したい夢、やりたいことがあってそれに打ち込んでいるわけだから残業がどうのとか言ってられないし、自分がやりたいことをやってるわけだからそれほど疲労もない。成功すれば巨万の富を得られる可能性もあれば、目先の残業がどうのとかも気にならないだろう。でも、労働者にそれを求めてどうする? 給料は出さないけど、やり甲斐はあるだろう?と強要して洗脳する…。典型的な「やり甲斐搾取」ですね。

しかし、この大学教授が口を滑らせてしまった理由も分からなくはないのだ。だって100時間って、確かに多いけど死ぬほどではない気もする。

発端となった電通社員の自殺をめぐっては、自殺直前の1カ月あたり残業時間が105時間を越えていたとして、厚生労働省が労災と認定。

例えば土日を休んで20日働いたとすると、一日あたり5.25時間。9時に始業して、毎日23時半に上がる感じ。毎日それでは確かにだいぶキツいだろうけど…。という感じ。それがあってこの大学教授も
「おお しゃいんよ しんでしまうとは なにごとじゃ」
と言ってみたくなったのだろうと思う。
実際、僕も昔の勤務先で、しばらく残業時間が100~120時間になったことがあったんですが、会社への不満や上司への怒りは蓄積していったものの、死ぬほどではなかったかなぁ、という気がします。

実際は200時間を超えていたのではないか?

が、ここで例の「Twitterによる労働実態の可視化」が。

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朝の4時…5時…。退社時間である。
徹夜して始発やタクシーで帰るような勤務が常態化していたようだ。

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22時前に帰れることが「奇跡」とまで。

dentu_tweet2

休日出社も常態化している。

 

「一日20時間会社にいる」「2時間睡眠が続いている」といったTweetを見る限り、おそらく週休1日での15~16時間労働(360時間、残業時間にして212時間)くらいはいっていたのではないだろうか。

被害者は、死の直前に母親に連絡していたという。

「仕事も人生も、とてもつらい。今までありがとう」−−。昨年のクリスマスの早朝、東京で1人暮らしの高橋まつりさんから静岡県に住む母幸美さん(53)にメールが届いた。あわてて電話し「死んではだめよ」と話しかけると、「うん、うん」と力ない返事があった。数時間後、高橋さんは自ら命を絶った。

電通新入社員:「体も心もズタズタ」…クリスマスに命絶つ – 毎日新聞

もしかしたら、このお母さんも、娘のTwitterを見て勤務実態を知っていたら。もっと違う対応を取っていたかもしれない。何もできなかったかもしれない。それでも、きっとこの最後の電話から数時間の間に、何かできたことがあったんじゃないか、という意識に苛まれ続けるのだろう。それは娘を失った心の痛みとともに、決して言えない辛い気持ちだろう。後に残されたひとを苦しめる自殺は、してはいけない選択だが、過労死は自殺であって自殺ではない。他殺だ。

人はなぜ逃げずに過労死に至るのか

例えば、入社試験のときに「当社にはパワハラとセクハラの風土があり、女子新入社員には特にガンガン浴びせます」「休日出勤は普通にあります。朝4時、6時まで働くこともしばしばです。」「でもタイムカードは操作するので、給与明細では残業時間は最大で130時間になります」「頑張っているのが顔に出ているうちはプロじゃない」などと面接で言われていたら、おそらく入社を躊躇するだろう。(圧迫面接のブラフかもしれないと思うかもしれないが)

入社1週間でそれが分かったら?1ヶ月なら?3ヶ月経てば…?

人はどんな環境にも慣れてしまう生き物だ。耐えているうちに、慣れたつもりになってしまうのだろう。しかしそれがあまりにも過酷な環境だと、長くは続かない。しかし、そのときには既に、釜茹でのカエルのように進退窮まり、「その環境から逃げる」という当たり前の選択ができなくなってしまう。「外部からの孤立」「疲労と妨害」などは、洗脳の手法でもあるので、自然と「組織に服従する無価値な自分」という状態になっていってしまうのかもしれない。

僕がこれから過労死するような過酷な労働環境に身をおくことは多分ないんだけど、20年後に自分の子供がブラック労働環境に身を投じていたら…。そう考えると、本当にやるせない気持ちになる。それまで、子供と何でも言い合える親子関係と築き、Twitterはしっかり見つけておくようにしたい。

子供をもつと、こういう子供が死ぬ痛ましい事件が本当に心に刺さって、辛くてしょうがないです。

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