エアギター大会(1) ~@新宿ロフト~
こんにちは! エアギタリストの宮本だぜ!
今日は、新宿ロフトで行なわれた、ダイムバッグ・ダレル追悼イベントで開催されたエアギター大会に出場してきた。
ダイムバッグ・ダレルは、90年代に活躍したメタルバンド“PANTERA”のギタリストである。その過剰に硬質でラウドな音像と、誰も考え付かなかったような斬新なギターリフとで、新世代のギターヒーローの名を欲しいままにしていた。しかし昨年12月、「PANTERAが解散したのはダレルのせい」と主張する気狂いによって、ステージ上で射殺されるという非業の死を遂げた。
そして3月9日、新宿ロフトでダレルの死を悼むイベント『THANK YOU! DARRELL!』が執り行われたのだった。
エアギタリストとして活動を初めて以来、初の公式試合ということで、並々ならぬ決意と意気込みをもって臨んだ。実はPANTERAの曲は僕のプレイスタイルと相性が良くないのだが、追悼イベントで他人の歌である『MIRACLE MAN』を演るわけにもいかないだろう。それに、僕だってダレルの死にショックを受けたメタルヘッズのひとりだ。
そこで、PANTERAの有名曲を2?3曲練習して大会に臨むことにした。ルールを問い合わせてみると、「バンドの出番の合間にDJが流す曲に合わせて演ってもらいます」とのことだったからだ。ひょっとすると曲の指定は出来ないかもしれない。このルールはキツい。いくら音の出ないエアとは言え、良く知らない曲や初めて聞く曲で打てるものではないのだ。アウェイにもほどがある。しかし、ダレル追悼イベントだったら、PANTERAは必ず流れるはずだ。僕は『MOUTH FOR WAR』と『COWBOY FROM HELL』、『NEW LEVEL』に望みを託すことにした。
不安を払拭するため、早めに会場入りをした。
「こういうステージに立つのも久しぶりだな」
ライブハウスの懐かしい空気に浸っていると、ルールを説明する店員の声が頭をよぎった。「バンドの転換時にエアギター大会を行ないます…」そうか、バンドセッティングの場つなぎとしてやるんだから、ステージは使えないんじゃないか!? そう思ってあたりを見回してみると、DJブースの前に、タタミ一畳分ほどの台が……奉行所で罪人が正座するところみたいな台がある。ここが今日のステージか! 端にはギタースタンドがあり、ダレルモデルを模した段ボール製のギターが立てかけてあった。まぁ、余興だし、こんなものか。
「エアギター演りたいんですけど、『MOUTH FOR WAR』お願いします」
「いいよ。じゃあ後でね」
DJは快く引き受けてくれた。これで曲の心配はクリアできた。後は演るだけだ。
1個目のバンドは3ピースのラウドパンクだった。メッセージ性の強いオリジナル曲を立て続けに演奏し、「みんなの力で、もうすぐダレルが降りてくると思います」と言い残してステージを去った。そうだ、ダレルよ、降りてきてくれ。僕には今宵おまえの力が必要だ。
「ただいまより、エアギター大会を始めます」
バンドの出番が終わると同時にアナウンスが響き、DJがBGMを流し始めた。……よし!
心の準備をしたものの、出番は2番目に決めていた。1番手のプレッシャーを避けると同時に大会のレベルを見極めておきたかった。それと、僕のもつテクニックを後から真似されるのも面白くない。
「優勝者には賞品があります。誰か挑戦しませんか?」
しかし、なかなか名乗りを上げる者がいない。結局ジリジリと待っている間に、次のバンドが始まってしまった。今度のバンドは、ダレルモデルのギターを弾きこなすメタルバンドだった。
次も誰も出なかったら、1番手でいい。出よう。自分が今日ここに何しに来たか思い出すんだ! と決意を新たにしたものの、この時間はトークショーということで、場が流れてしまう。
そして3番目のバンドが登場した。金管が左右に3人いて、中央にギターが2人いて、キーボードまでいる大所帯のインストバンドだった。ジャンル的にはハードコア・フリージャズとでも言おうか。延々とジャムってるような前衛的な音楽だった。
そしてとうとうエアギターの時間が再度巡ってきた。今度こそ、と思ったら1番手がミニステージに上がった。段ボール製のダレルギターを手にした彼は、照れ笑いを浮かべながら一通りギターを弾くフリをして終わった。掃除の時間のホウキギターレベルだった。これなら勝てる。
僕は段ボールギターを使わない。こういう得物は、泳げない人が使うビート板のようなものだ。あると安心できるけど、それに頼っているうちは本当に泳げるようにならない。エアギターは文字通り空気のギターを、誰の目にも見えるように表現する高度なパフォーミングアートなのである。
ヒュー!ピーピー! 口笛を浴びながら、DJブースのわきでスタンバイをする。曲が始まる前に、エア・エフェクターやエア・アンプをいじりたところだけど、このDJスタイルでどんどんつないでいるとそれはカットせざるを得ないかな…。そんなことを考えて待っているが、一向に『MOUTH FOR WAR』がかからない。おかしいな…。もう3曲目じゃないか。このままでは時間切れで次のバンドが始まってしまう。そして、次のバンドは最後のバンド。つまり、もうエアギタータイムはない。
「どうしたの? 早くしなよ」
ギャラリーが痺れを切らしている。あいつ、ブルっちまったんじゃねぇのか? そんな声も聞こえてくる。違うんだ、曲を待ってるだけなんだ…! ちゃんと始まる前にDJに頼んでおいた『MOUTH FOR WAR』を……。
4曲目が始まったとき、僕はようやく気付いた。
DJが変わってる!!
絶望感が僕を襲った。こうなったら、しょうがない。5曲目が始まったら、ぶっつけ本番でやるしかない。フィンガーシンクが甘くなってしまうけど、バッキングのリフくらいならなんとかなるだろう。今まで練習してきた自分を信じるしかない。
4曲目がフェイドアウトしていく。悲痛な覚悟を決め、玉砕覚悟でステージに飛び乗った。5曲目がちょうど始まる。
その瞬間、奇跡は、起こった。
ジャカジャカジャーー! ジャジャジャ ジャカジャカジャ ジャージャー!
「!?」
耳になじんだこのリフを聞き間違えるはずもなかった。流れてきたのは、ヌメリナイトでもオープニングに使った僕の十八番、『MIRACLE MAN』だったのだ。何たる偶然か。天国のダレルが助けてくれたのか? そこからは手がほとんど勝手に動いた。まさに水を得た魚だった。段ボールギターを使わず、素手で壇上に上った僕を怪訝そうに見ていた聴衆が目を見張るのが感じられた。
「おおお!」
フロアにどよめきが広がった。エアギターを酒席の余興にしか考えていない参加者と、競技として真剣に取り組む僕とではレベルに差がありすぎた。チョーキングも、ピッキングハーモニクスも完璧に決まった。恐竜の咆哮のようなザックのギターソロがフェイドアウトすると同時に、6曲目に切り替わった。やった。ここまでできれば、勝っても負けても悔いはなかった。
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3人目の挑戦者が現れた。曲は初期メタリカの『Hit the Lights』だった。彼は乱暴な曲調に合わせて激しく動き、段ボールギターを引きちぎってしまった。あれはエア・プレイではない。ただのモッシュだ。エアギターは、音が出ないからこそ、音が“出そうな”動きをしなくてはならない。僕は勝利を確信した。
かくして、賞品の“日本公演時にダレルが投げたピック”は僕のものとなった。記念すべき初の公式戦だったが、半ば不戦勝のようなものだったし、せっかく練習したPANTERAを演って追悼することもできなかった。しかし優勝は優勝。幸先の良いスタートを切れた。サンキュー、ダレル。
20006年世界大会まで、あと1年4ヶ月。
2005年3月10日 at 02:06
かっけー!
おめでとうございます!
2005年3月10日 at 06:22
えーと、確認したいのですが、ランディって、ランディ・ローズの事でしょーか?
彼の弾く”ミラクルマン”が存在するとしたら、”本当に奇跡”な事なのですが・・・。
2005年3月10日 at 06:55
>>1
ありがとうございます!
>>2
お察しのとおり当方の勘違いです。修正いたしました。
2005年3月11日 at 04:08
YES!!センキュー!
世界大会にどうやって出場するのかわかりませんが、なんとか頑張ってみます!
2005年3月11日 at 09:45
おお!
エアギター大会アツイっすね!
世界大会も頑張ってください!
匿名さんとして応援します!