A級戦犯の分祀とは?

2005年6月10日 金曜日

 神社本庁が「A級戦犯の分祀は不可能」との見解を公式に発表した。(YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 巷で交わされている「A級戦犯分祀」の議論は、2つの勘違いをはらんでいる。
 まず、「A級」という言葉について。A級ライセンス、B級映画、C級グルメ、などのように、A級という言葉は、ランクの高低を示す言葉として知られている。
 しかし、「A級戦犯」という言葉で使われているA級は、ランクの意味ではないのだ。

 では何か。ただの区分である。

 かの悪名高き東京裁判において、
A「平和に対する罪」
B「通例の戦争犯罪」
C「人道に対する罪」
 という3種類の戦争犯罪が設定された。つまりA級B級というのは、単なる項目名でしかないのだ。(ちなみに、日本はホロコーストのような人道に対する罪をはたらかなかったため、日本にはC級戦犯は存在しないが、名前だけ「BC級戦犯」として残っている。)

 ドイツでの戦後裁判は2項目ですんだが、日本に対しては、大東亜太平洋戦争があまりに大スケールであったためか、民族的敵視のためか、戦争を起こしたこと自体に対する罪がA項ででっちあげられた。これは歴史上に類を見ない事例である。そもそも戦争というのは、外交上の一手段でしかなく、戦争自体をさばく法など地球上のどこにも存在しない。唯一の例外がこの野蛮なリンチ裁判だ。

 次に「分祀」の問題。神社本庁も言っているとおり、「分祀」の意味が誤解されている。神道における「分祀」というは、祭神をよその新しい神社にまつることだ。しかしこれは、別れて引っ越すのではなく、元の神社にもその祭神は変わらずまつられ続ける。分祀とは分離独立ではないのだ。ろうそくの火を継ぎ足すように、祭神が増えていく。中国や河野洋平がどうしてもそうしたいってんなら、別に止めないけど……。

 そして、今でも「新たに無宗教の追悼施設を」とか言ってる人がいると聞いて、驚きを禁じえない。こんな短いセンテンスの中に、よくもこんなに矛盾をはらめるものだ。「死者の魂を追悼する」という行為自体が既に宗教なのだから、無宗教なんだったら追悼施設なんていらないではないか。死体はただの肉の塊、魂なんて存在しない。問題はそんなところじゃない。

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コメント / トラックバック 4 件

  1. パチョレック石川梨華 Says:

    自分たちでA級戦犯の「復権」を決議し、その結果としての合祀であるにもかかわらず、朝日新聞の扇動によって中国が難癖をつけてくると、突然豹変してA級戦犯分祀や靖国参拝中止を言い出す、一部議員たち。

    http://www.nipponkaigi.org/reidai01/Opinion1(J)/yasukuni/ohara.htm

    岡田ジャスコ民主党党首は国会で小泉首相から「中国がだめだと言うからやめろと言うのか」と反駁を受けてました。

    江の傭兵しかりですが日中友好第一主義の政治家には外患誘致罪を適用すべきだと思います

  2. 匿名 Says:

    今回の記事はちょっと勉強になりました。こういう定義とか実態がよく分からない問題って、マスコミの報道の仕方でなんとでも世論を誘導できますよねぇ。

  3. kuroneko_kun Says:

    A級戦犯の意味は知りませんでした。 後で調べなおさなくては。

  4. 宮本 Says:

    >>パチョレック石川梨華さん
    実際やつらは「中国がだめアルというからやめろ」と言ってるに過ぎないんですよね。
    日中友好が絶対正義か?友好国に値する相手か?今一度考えるべきときですよね。

    >>2
    僕も最初に知ったときは意外でした。「A級、A級」と言葉のみが独り歩きしている感じがします。多分世論調査とかしてみたら、ほとんどの人は勘違いしてるんじゃないでしょうか。
    また、この勘違いを放置したままのほうが都合が良い人が大勢いる、ということなのでしょう、きっと。

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