映画『イノセンス』雑感

2004年3月6日 土曜日

 公開を目前にますます力の入る『イノセンス』プロモーション。インタビュー記事も随所で見かけるようになりました。そのうちの1つ、読売のインタビュー

鈴木 「中身に口を出すつもりはない。但し、一つだけ気に入らないことがある。このタイトルはよくない」って。当初は、「攻殻機動隊2」というタイトルだったんです。これじゃ、売れるものも売れなくなります。海外でいくら評価が高くても、日本で12万人しか動員していない作品の続編が、売れるはずがないんです。僕は、代わりのタイトルを提案しました。「イノセンス」はどうか、と。

—押井監督の反応は。

鈴木 しばらく沈黙した後、「その手があったか」って。勝ちましたよ(笑)。映画製作にとって、タイトルというのは、とても重要なんです。そのタイトル目指して作っていくものですから。「機動隊」という文字が入っていたら、やっぱり機動隊の話になっていくんです。それでは、沢山の人に観てもらえません。

 数日前に、「タイトルを『攻殻機動隊2』にしなかったのはマーケティング的にOKなんだろうけど」と書きましたが、実はもともと『攻殻機動隊2』だった、という話。M君ありがとう。いい話ですねこれ。作るものをできる限り良いものにしようという男達の意地のぶつかり合いですよ。「その手があったか」ってのもかわいいですね、押井監督。意固地にならず良いものは良いと認める姿勢。また、鈴木氏の「ネットだのそこから生まれた子どもだのというのは、私にはよく分かりませんでした。」という発言も格好良いと思う。分からないものを分からないと公言するのは勇気のいることだ。

 そう言えば、劇中でバトーとトグサはしばしばミルトンや論語から引用したり、哲学談義をしたりするんですが、意味を考えているうちにどんどん次の会話に進んでしまう。「こんなに色々暗記してる奴いるかよ」と最初は思ったんですが、彼らの脳は電脳*化されているので、外部メモリーからその都度データを持ってきているんですね。つまり、まさに「別窓で検索しながらチャットをしている」状態なわけだ。

「本棚を見ればその人がわかる」と言いますが、「外付けメモリーを見ればその人がわかる」ってことですね。そんな未来が訪れたら、何を保存しておこうか。とりあえず福本全漫画、ガンダム全話を辞書登録し、随時引用しておしゃれな会話を楽しみたい。あとは論語と聖書はまぁ入れるな。それと失われた時を求めて。電車待ちとか食事時とかトイレとか、空き時間を見つけてはちょくちょくアクセスして読む。

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*電脳……脳に対してマイクロマシンを注入し、首に入出力インターフェースを埋め込むことで、思考を直接外部とやりとり可能となる脳の事を電脳という。

▽参照リンク

「イノセンス」は、20年目の“宿題” 鈴木プロデューサーに聞く

イノセンスを語る(糸井×鈴木)

不完全用語集

チャットしながら検索するようなもの—–


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