PRIDE 2004 決勝戦(1)
皆さん、ハッスルしてますか? ミヤモトです。さて、先週の試合以降、あらゆる格闘系メディアやWEBサイトから目をそむけ続け、情報を遮断し、待ちに待ったPRIDE決勝戦が月曜日に地上波で放送された。決勝にふさわしく、高レベルで盛り上がるカードが多かった。ミルコのワンマッチも良かった。
そして問題の小川 VS ヒョードル。
この試合だけは流石に結果を知ってしまった。あちこちで表紙になってたし。(それにしても、地上波が一週間遅れというのは本当にふざけている。誰もがスカパーに加入できる環境ではないのに。)
しかしまたこの試合だけは事前に結果がほぼ見えていたので、興味は2点に集約される。
つまり、
・小川はいかに負けたのか(ヒョードルはいかに勝ったのか)
・小川は負けてもハッスルしたのか
の2点である。
いつもどおりヒールらしく、開始直前に相手が差し出した手を無視して背を向ける小川。序盤は定石どおりスタンドでの探りあいになるが、ヒョードルの打撃に圧倒される。小川は完全にペースをとられ、たまらずヒョードルにしがみついてグラウンドに移行するも、あっという間にマウントポジションを取られる。結局そのまま劣勢を返すことができず、腕を極められて敗北。54秒で試合終了。完敗だった。
事前の煽りVで、12年前のオリンピック柔道での敗戦、世間からの非難、小川の孤独、苦悩、絶望、そして再起…などというバックグランドストーリーが延々と流されるので、いやがおうにも小川を応援したくなるようにできている。しかしヒョードルには勝てないだろう。ならばせめて、日本男児として、格闘家として恥ずかしくない勝負をしてもらいたい。そう思っていた。
僕は愛国者である。小川に「ヒョードルを好きな奴らにも、1日くらいは俺の応援をしてほしい。日本人なんだからさ」などと言われるまでもなく、スポーツの試合があれば無条件で日本を応援するし、小川の事だって喜んで応援したい。しかし何か引っ掛かりを覚えるのも事実。
かつてヒョードルは語った。「ハッスルポーズは相手を愚弄している。私のリングではあんな下品なパフォーマンスはさせない。」と。言うまでもなく、スポーツにおいて大事なのはスポーツマン精神、武道においては礼節、格闘技においては勝敗である。
「勝っても負けても…最後、ハッスルだけはさせてください!お願いします!」リング上で頭を下げる小川。とんだ茶番だ、と思っていたら高田総裁は「胸が熱いです……!」と仰った。僕はこの言葉を聞いて、笑いを通り越して呆れてしまったんだけど、驚いたことに客席からは拍手。誰もが笑顔で立ち上がって「ハッスル!」。これには目を疑った。しかしプロレスファンの間ではこれは割と一般的な反応らしいのだ。「小川よ! 負けてこそハッスルだ! 感動した!」みたいな。いやいや、それって違うだろ。
「負けてもハッスル」って何じゃそりゃ? あんなものは勝ち名乗りなんだから、勝ってこそだろうが。ヒョードルは、予告どおり失神KOによってあのパフォーマンスを阻止するべきだった。いや、それ以前に周りの人間が止めるべきだった。観衆は、温かい歓声の代わりにブーイングをもって迎えるべきだった。結局、12年前に比べて変わった事といえば、あの頃と違って今は優しく生ヌルいプロレスファンに囲まれてるってことだけなんである。良かったな小川。—–
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