バリ島にてテロ事件を思う

2005年10月4日 火曜日

 今、僕はバリ島にいます。
 ニュースでは連日テロ事件でかまびすしいようですが、こちらは平和なものです。ここはウブドという森の奥深い高原地帯で、赤道直下のバリ島にあっても常に涼しく、人々は親切で、果物はおいしく、まさに地上の楽園です。僕はもともとトロピカルフルーツが好きなんですが、ここは新鮮なので本当においしい、暴力的な甘さが体験できます。南国の人は基本的におおらか、悪く言うとナマケモノといいますが、働かなくても(耕したり追いかけたりしなくても)こんなおいしいものが食べられるとしたら、そりゃおおらかにもなるよなぁ、と真剣に考えるほどおいしい。

 テロの影響も心配でしたが、ここも観光地と言えども、そういう心配はあまりしなくていいようです。爆弾テロがあったのは、バリ島の中心部の都市型観光地です。イスラム世界では、10月からラマダンと呼ばれる断食月に入ります。イスラム教徒は、日中は食べ物はおろか飲み物すら口にすることができません。それを前にして、ちゃらちゃら夜中に酒を飲んだりデスコテックで踊ったりしている西洋人が、警告というか見せしめの意図をもって狙われたというわけです。

 毎日新聞の社説には、『バリ島事件 対テロ国際戦略を練り直そう』と題して、こうあります。

 人々は改めて「イスラムの脅威」を肌で感じたはずである。
 だが、イスラムは決してテロを推奨していない。事件の舞台になったインドネシアは、世界最大のイスラム人口を有する国で、もともと穏健なイスラム社会を形成していた。一握りの過激派のために、イスラムが「テロの宗教」のように見られるとすれば、同国をはじめ多くの国々のイスラム教徒にとって屈辱的なことである。

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 バリ島は確かにインドネシア固有の領土で、インドネシアは確かに世界最大のイスラム国家です。しかし、ここでは触れられていないことですが、バリ島はインドネシアといっても本土とはまったく違う文化圏を形成しており、ほとんど違う国と言っても差し支えないくらい違う世界です。そもそも、人口の8割以上がイスラム教徒のインドネシアにあって、バリ島の宗教人口は8割がヒンドゥー教徒です。

 ここだけとってみても、すでにこの爆弾テロの思想的根拠や目的は怪しくなってきますが、しかも警備の厚い欧米系の大使館ではなく、西洋人観光客が多く集まるレストランを選んだところに、このテロ計画の卑劣さや薄さが現われています。ヒンドゥー教徒の島で、インドネシア人を巻き添えにして、西洋人観光客を殺傷する。狂的な巨人ファンが、阪神優勝の腹いせに「Jリーグにも大阪のチームがあるから」という理由で、横浜で見かけたサッカーのサポーターを無差別にで殴るようなものです。無意味すぎます。—–


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うーん…いまいち…ふつうですかなり良い素晴らしい (まだ評価されていません)
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コメント / トラックバック 1 件

  1. joyce Says:

    初めまして。joyceと申します。
    ちょくちょくお邪魔させていただいておりました。
    バリ島からのレポート、拝見いたしました。
    17日からバリ島へ行く予定にしていた矢先のテロ事件、少々いたかったですが、ウブドの平和な様子を再確認できてやっぱり行こうと決めました。
    私もバリは全く初めてではなく、以前のテロの時にも実はバリにいたのですが、日本にいるとどうしてもそのあたりの現地の感覚がマヒしてしまいがちです。
    私もウブドのあのまったりとした空気、早く吸いたくなりました。

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