仮面ライダーW 感想 最後の依頼(48,49話)
48話&49話 (最終回直前エピソード)
「翔太郎、約束してくれ。僕がいなくなって、たとえ一人になっても、君自身の手でこの街を守り抜くと」
「絶対呑めねぇ。次にこれを挿したら、お前がいなくなっちまうなんて…」
最終回の直前、1年をかけた物語のクライマックスとなるこの2話。これがもう、疾風の展開とお約束の切り札とをおりまぜた怒濤のドラマ、そして役者陣の熱演にすっかり引き込まれてしまった。
あらすじ
最後の依頼人は、相棒のフィリップだった。「若菜姉さんを助け出したい」。
フィリップの体があと1回しか変身に耐えられないことが明らかになった。フィリップは「どうせ消えるなら、最後に姉さんを助けて消えたい」と正太郎に依頼する。しかし実際にその時になると、翔太郎はどうしても変身することができない。若菜も冴子も加頭に連れ去られ、照井は瀕死の重傷を負ってしまう。「君が変身をためらったせいでこのザマだ!」翔太郎をなじるフィリップ。ところが、その間に加頭によって、身近な人たちが次々と襲われていく。所長の亜樹子まで…。
慟哭するフィリップを見た翔太郎は、「ごめんな、フィリップ」とつぶやき、ひとり事務所を後にする。その手には、事件以来はじめて手にする、おやっさんの形見である白いソフト帽があった。
翔太郎は、1人で若菜を救出することを決意したのだ。最後の依頼人…フィリップと、その母であるシュラウドとの約束を果たすため、フィリップが安心して消えられるように。
そして二人の最後の変身と、別れのときがやってきた。
見所
ハードボイルド探偵
第一の見所は、なんと言っても生身の翔太郎が一人で、最強の敵が待ち受ける廃工場に乗り込んでいくところだろう。ユートピア加頭が若菜を生贄にその野望をかなえようとしているところに、靴音と共にゆっくりと翔太郎が姿を現す。
「キミか…。何の用です?」
「…邪魔しに来た。」
この朝8時とは思えないハードボイルドな台詞と共に、あの主題歌『WBX』が流れるんですよ! 今まで、どんな展開でも劇中で主題歌は流れたことがない。(はず。映画をのぞく)
それがやっとここで使われた演出に心底しびれると共に、このドラマは「俺達は二人で一人」と言いつつ、本当の主人公はいつも「心優しきハードボイルド」左翔太郎だったのだ、と気付かされた。このシーンは、カメラワーク、間、台詞、音楽の入りと、全て完璧。
最後の変身と別れ
若菜を救い、ふっきれた翔太郎はフィリップと最後の変身をし、ユートピアを葬り去る。しかしそれは、今度こそ本当にフィリップとの別れがやってきたことを意味するのだった。
「じゃあ…。行くよ」
「俺の手で、やらせてくれ」
ベルトのレバーを戻して変身を解除しようとするフィリップの手を押さえる翔太郎。
「泣いているのかい、翔太郎…?」
「バカ言うな」
ハードボイルドの男は決して涙を見せない。しかし強がる翔太郎の目からはとめどなく涙が溢れて…。
このシーンを撮影した後、カメラが止まっても二人は涙をとめることが出来ず、袖で見ていた加頭役と若菜役の二人もまた、涙を抑えることが出来なかったそうだ。
園咲琉兵衛役のベテラン俳優、寺田農もこんなことを言っている。
「泣ける仮面ライダーはそうはない。嘘だと思うんならみてごらんなさい」
(仮面ライダーW(ダブル) 第48話 「残されたU/永遠の相棒」|東映[テレビ])
そう、だから僕がこのシーンで大号泣したとしても、何も不思議じゃないし、恥ずかしいことでもないのだ!
後日、フィリップのいなくなった事務所で、翔太郎は残された贈り物の包みを見つける。箱の中にあったのは、一人用の変身ドライバーと、街の平和を託す「相棒」からのメッセージだった。
余談
傷つきながらも、最大の敵に向かっていく翔太郎の姿に、ドラえもんの公式最終回を思い出したのは、僕だけではないだろう。
「僕が強くならないと、ドラえもんが安心して未来に帰れないんだ!」と、のび太がボロボロになりながらも一人でジャイアンに向かっていくエピソードである。あれも子供心に泣けたなー。(もちろん大人になってから読んでも泣く)
「ぼくだけの力できみに勝たないと… ドラえもんが… 安心して… 帰れないんだ!」
優しくて、普段は失敗したりするけれど、決めるべき所はびしっと決める。
彼らのようにハーフボイルドにいきたいものである。
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