『ボーン・スプレマシー』を観た

2011年8月4日 木曜日

記憶をなくした元特殊工作員の孤独な戦いを描いた人気アクション・サスペンス、『ボーン』シリーズ3部作の2作目。
ハッピーエンドに終わった第1作と比べて、本作は明らかに暗く、重苦しい。なんせ映画が始まって10分で…前作の……が……ですからね。しかしそれも、続く最終作へ向けて物語を展開させるためには仕方のない投資なのか。前作のラストがハッピーエンディングとは言え、相変わらず主人公の記憶はほとんど戻っていないし、“抜け忍”として追われる身であることに変わりなく、であれば2作目では大きな波乱で幕を開けるしかないだろう。

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ボーン・スプレマシー

作品を覆う雰囲気の暗さとリンクして、物語の舞台も謀略都市ベルリン、そして厚い雲がたれ込めたモスクワ、と移っていく。格闘シーンの切れ味や、拘束されたところからの一瞬の脱出劇など、アクションシークエンスも前作同様、よく錬られているし、マット・デイモンがよく練習しているのだろう、ハンディカメラの臨場感あふれるカットとあいまって、説得力ある映像に仕上がっている。

カーチェイスにも「これでもか」と言わんばかりに気合いが入っている。モスクワの異様に広い道路を疾走し、スピンし、吹っ飛ぶ車。カーチェイス自体にさほど興味のない僕も、思わず手に汗を握った。
(特典映像のメイキングで、カーチェイスシーンのために作った撮影用の特殊装置を見ることができる。これによって、激しいカースタントもマット・デイモン自身を運転席に座らせ、かつ運転席のアップなどのこれまで存在しなかった映像表現を、CGに頼ることなく実現している)

三部作の真ん中という位置づけについて

三部作といえば、前世紀の傑作である『スターウォーズ』を思い出すが、あれもハッピーエンドの1作目(EP4)に比べて、2作目(EP5)は氷の惑星で始まり、最後はルークは敗北して片腕を失うしで、暗い展開だった。

僕の中では本作は、3作目でのカタルシスのための「溜め」の位置づけ。物語は奥行きを増し、ボーンの記憶の断片が戻ってくる。それと同時に陰謀の全容が、またラストで明らかになるボーンのモスクワ行きの目的からは、その人間性が見えてくる。
単体で見るとアクション映画としての爽快感には欠けるが、『ボーン』シリーズ3部作を全体としてより楽しむためには、外せない作品であると言えるだろう。

★★★☆☆

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