ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間

2011年8月27日 土曜日

とうとう見ることが出来た。ファンタジー作品の原初にして最高峰、『指輪物語』の実写映画。原作の『指輪物語』を読んだのは中学生の頃だったんだけど、あの壮大に構築されたファンタジー世界のイメージと、手に汗握るスリリングな展開、魅力的なキャラクター達が、完全に映像化されていることに驚いた(ホビットが、ちゃんとちっちゃい!)。これは映像技術の発達した現在でないと、撮ることは不可能だったに違いない。(と言ってももう10年くらい経つんだけど)

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ロード・オブ・ザ・リング

もちろん、この映画の完成度が高いのは、テクノロジーやCGの技術だけのためではない。原作自体の魅力と、それを最大限に尊重した作り手のこだわりが支えている。例えば、作中に出てくるエルフ語や、モリアの坑道の壁に刻まれたドワーフ語などは、トールキン研究者の協力を得て、ちゃんと翻訳も出来るくらいに本物のエルフ語、ドワーフ語が使われている。(そもそも、エルフ語などの言語体系をまともに作ろうとしたトールキンがすごい)こうした細部に妥協をしない点が、物語と映像に奥行きと、リアリティを与えている。ファンタジーは、リアルではないからこそ、リアリティは現代劇よりも重視されなければならない。

第一作となる『旅の仲間』では、ホビット庄の再現度、指輪をはめたときの映像表現、キャラクター達のハマり具合などだけでも楽しい。ちなみに、ドラキュラ伯爵やドゥークー伯爵でおなじみ、クリストファー・リーは、トールキンとも面識がある大の原作ファンで、ガンダルフ役を熱望していたらしいが、ライバルである悪の側の魔法使い、サルマンでキャスティングされている。気持ちは分かるけど、ちょっとガンダルフにしては顔が厳しすぎるので、本人には悪いがこれで良かったのだろうと思う。

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さて、この作品の主題は、僕は「人にはそれぞれ、自分の役割がある」ということだと思っている。
クリストファー・リーがサルマン役に抜擢されるのと同様、人は自分の意志とは別に、何らかの役割を担わせられることがある。この『旅の仲間』達も、あるものは自分の意志で、あるものはなりゆきで、またあるものは「指輪」の意志で、それぞれの役割にキャスティングされ、冒険の旅をともにする。その旅の中で、指輪に誘惑されたり、名誉のために戦いに殉じたり、決して裏切らぬ友情がはぐくまれたりして行くのだった。
旅の仲間は、剣の腕が立つものばかりではない。中でも特に何の能力も持っていない小さい人、ホビットが、「指輪」を葬るという大役を担うところにこの話のおもしろさがある。そして人々をもっとも苦しめるのは、肉体的能力の強弱ではなく、むしろ心の弱さなのである。

★★★★☆

一つ難点をあげるとすれば、『ロード・オブ・ザ・リング』という間の抜けた放題。名訳である『指輪物語』か、原題をそのままカタカナにした『ザ・ロード・オブ・ザ・リングス』か、どっちかにしてほしかった。


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