僕はハロプロが好きだ。とりわけW(ダブルユー)は大好きだ。Wのミュージカルには、結局通算で7回通った。平日にも行った。素晴らしかった。仕事を辞めた甲斐があった……。でも、僕がこれほど足しげく観劇しにいったのは、おそらく“現場”に行くのはこれで最後だろうという気がしていたからである。
僕はそもそも、
ハロプロのコンサートが嫌いだ。歌を遮って大合唱される“合いの手”、ステージを見ない奇妙な踊り、進行やMCを邪魔する奇声、イントロでバカの一つ覚えのように繰り返される「オイ!オイ!」の怒号。その他のヲタ芸、臭気、特攻服、スケッチブック、全てが癇に障る。
だから僕は
ミュージカルが好きだ。まずミュージカルは会場が狭くてステージに近いのが素晴らしい。そして着席なので、踊ったり叫んだりするものはいない(はずだ)し、歌ではないので合いの手やヲタ芸に付き合わずに済む。後はじっくりステージを眺めていればいい。天国だ。
しかし、その聖域を土足で踏みにじられた。ミュージカルの千秋楽ということである程度熱くなってしまうのは仕方ないのかもしれないが、それにしても非道かった。
Wミュージカル最終公演での話。会場の前で円陣を組んで“気合い入れ”をしているオタを見たときから嫌な予感はしていた。席について、左が特攻服オタ、右が振りコピオタ、前がメガホン厨だったとき、予感は確信に変わった。今日は絶対楽しめない、と。あとは暗黒の1時間だった。とくに鬱陶しいのは前に座っているメガホン厨二人組だった。こいつらがひっきりなしに妙なアクセントで
「アーイヴォーー!」「アーーイヴォーー!」とメガホンで怒鳴っているのだ。しまいには気が狂いそうになり「うるさいから止めろ」と割と強い調子で注意したが、ほとんどお構いなしだった。僕はひとつ賢くなった。必死厨は言っても聞かない。
係員も見て見ぬフリだった。そもそも、前説で「ペンライト、サイリウム等の使用はご遠慮ください」と言っているのは全くの有名無実だ。そこで僕の頭にある考えが去来したのだが、ひょっとして彼ら運営側は、ある程度の“アイドルファン作法”を認めてやることが親切だと思っていたのではないか?
要するに、ミュージカル中に奇声を発したり、歌のときに立ち上がったり光る棒を振り回したり、そういう諸々の逸脱行為を認めてやったほうがコイツラ喜ぶだろう、という意識だったのではないだろうか。だとすれば、係員はただ突っ立っているだけ、カメラくらいしか取り締まらなかったのも説明がつく。
開演前に、入り口付近で円陣を組んで「今日は千秋楽! 我々の力で盛り上げていきまっしょい!!」とか叫んでいるのを見かけたが、ひょっとしてあいつらも良かれと思ってやっているのでは……。だとすると、やっぱり“現場”に僕の居場所はない。
色々と偉そうに批判している僕ではあるが、かといって自分が理想的な観客だとは思っていない。会場が全部僕だったら静か過ぎる。曲終わりも煽りの返事も拍手だけになって、ピアノの発表会みたいになる。
この日も、環境改善を完全に諦めた僕は、それでもなんとかステージに集中するべく精神を研ぎ澄まし、石像のように微動だにせず舞台上を凝視していた。(6列目なのに)