読書感想文(23) 博士の愛した数式
2005年8月1日 月曜日
博士の愛した数式 小川 洋子
レビュアー: 宮本・ザ・ニンジャ
脳障害で80分しか記憶が持たなくなってしまった老数学者と、母子のふれあいを描いた叙情的作品。主人公は家政婦として毎日“博士”の元へ通うが、80分しか記憶が持たない博士は、いつも初対面になってしまう。しかしそこに10歳になる息子を交えた心の交流が生まれる。というお話。
我々はともすれば過去にばかり眼を向けてふさいでしまったり、未来ばかり見て不安に押しつぶされそうになったりするが、彼らは現在のことしか考えない。
どんなに楽しい時間を過ごしたとしても、博士との時間は文字通り“今”しかない、ということが分かっているからこそ、誰もが相手のことを心から思いやっているのだ。ひたむきに今を生きようとする3人の姿は、美しい。
物語は、やがて来る悲しい結末を予期させながら進むが、実際に悲しい結末は描かれない。温かい雰囲気のまま、うっすらと冷めて、やや唐突に終わる。まるで「証明終わり」とでもいうような幕引きだった。
“数式”という点で尻込みしている文系人間にもおすすめしたい。分数の割り算が分からなくても読める。
★★★☆☆
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2005年8月3日 at 09:22
今度読んでみよと思いますー
2005年8月4日 at 12:49
ぜひ読んでみてくださいなー。