二百三高地

2006年5月18日 木曜日

海は死にますか 山は死にますか ★★★★☆


二百三高地二百三高地

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 日露戦争最大の激戦地となった、二百三高地の攻防戦を巡る重厚なストーリー。
先の大戦のスケールや悲劇的性格、以降の世界版図に与えた影響が大きすぎたために、歴史の中の一コマとして語られてしまいがちな日露戦争。しかしそれはわずか100年前の話ですし、世界史的影響や日本史的意義の大きさも計り知れません。アメリカでもイギリスでも、歴史の教科書には東郷平八郎の名があり、フィンランドには今でもトウゴウビールがあると聞きます。

 しかしわずかに100年前と言っても、今とは全く戦争の仕方が違います。基本的には、銃を持った歩兵が大勢で突っ込んでいく、「合戦」とでも言うべきスタイルです。この映画で特に印象的だったのは、「停戦日」として前線の両軍兵士が酒やタバコを交換しながら歓談している描写。字幕によると、「当時の戦争には、まだ武士道と騎士道のフェアプレー精神が残っていた」そうです。

 しかしそれでもロシア軍には機銃が配備されていて、日本軍の歩兵銃の何十倍もの弾丸が飛んでくる。日本軍は劣勢を打開するために強攻策を立て、それでも攻めあぐねてどん詰まりになるととりあえず指揮官の「突撃」で一斉に突っ込み、部隊が全滅する……。この戦争には勝ちましたが、50年後の戦争の敗因を蔵しているような気がします。

 3時間の長丁場で、演出も泥臭さや時代を感じさせるものが多いのですが、映画のスケールとドラマ感は、流石と言うべきでしょうか。あとはキャストも、当時の日本映画界の銀幕スター終結の感があります。三船敏郎の明治大帝、仲代達矢の乃木大将に丹波哲郎の児玉大将、そして森繁久弥の伊藤博文など、まさにハマり役、ハマり過ぎてて怖いくらいです。しゃきしゃきと喋り、動く森繁が見られます。なんせ100年前だからなぁ。

 キャストのハマり具合について、一説によると、台湾でこの映画が上映されたとき、明治天皇が登場した瞬間に観客が全員起立して敬礼をしてしまい、上映禁止になった(既に国民党支配下になっていたから)というほどです。まぁこのエピソードは、キャストのハマり具合というよりも、台湾人民の忠義を語るものとも言えます。


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