変な日本語(2) 「普通に」の発祥
日本語の波間にたゆたう変な言葉をつっついていくシリーズ。2回目です。
「普通に」という“変な日本語”についてです。
「普通」というのは全く普通の言葉であり、ちっとも変な日本語ではないんですが、近年ちょっと不思議なニュアンスがかみされて使われることがあります。
まず辞書にあたってみると、
ふ‐つう【普通】
[名・形動]特に変わっていないこと。ごくありふれたものであること。それがあたりまえであること。また、そのさま。「今回は―以上の出来だ」「―の勤め人」「朝は六時に起きるのが―だ」「目つきが―でない」
[副]たいてい。通常。一般に。「―七月には梅雨が上がる」
といった感じで、これが普通の使い方ですね。
普通でないのは、
「この番組は普通におもしろい」
「この食べ物は普通においしい」
といったような使い方です。
45 :名無し象は鼻がウナギだ!:04/11/30 21:56 ID:?
「広く一般と同じく」の意味ではない、俗に使われる「普通に」
1.悪い又は期待以下であることも想定される(想定された)が決してそうではなく。
「普通にこの映画面白いよ」「普通にウマいじゃん」
2.当たり前に断言できるほど。断言できるのが当たり前なほど。
「普通にウザいし」「普通にブサイクなんだ?」
代替意味の解明はこんな所でいいと思うんですが、そもそもなんでこの「普通に」という不思議な言い方が登場したのか、については解明されてなかったので考えてみました。
結論からいうと、「普通に」の前に「ある意味」という言い回しがあったのではないかと思います。
90年代から00年代になって、価値観の多様化や笑い、面白さに対するレイヤーの重層化に伴って、「ある意味おもしろい」という表現が生まれました。
この「ある意味おもしろい」というのは、「(おもしろくないが故に、あるいはおもしろさを突き詰めすぎたために)一周回っておもしろい」というニュアンスを包含し、「おもしろくないが努力は認める」といったような婉曲表現としても使われているのではないでしょうか。これは今でも「普通に」通用する言い回しかと思います。
で、これって「面白さに対する高度に抽象化された感覚を持つ私はより高次の面白さを理解できるが、この対象の面白さの目指す意味とレヴェルは理解できるので、評価する」という「上から目線」の面白さ判定なわけですよね。
すると「おもしろい」というだけでは、果たして本当におもしろいのか、それともある意味おもしろいのに投げやりにおもしろいといっているのか、判別しづらくなる。
そこで、「ある意味」、つまりうがった見方ではなく、本当におもしろく感じる、あるいは真っ当に判断して、素直におもしろい、という面白さを表現するのに
「普通におもしろい」
という表現が自然発生的に使われ出したのだと思います。
つまり、対象のおもしろさやおいしさの程度を評価するための言葉ではなくて、その面白さ/おいしさのコンテクストを確認するための言葉なんですね。
僕はこの用法は、「普通に」「アリ」なんじゃないかと思っています。
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2010年10月25日 at 23:40
なるほど。「ある意味」に対するカウンターみたいな感じか。