「お金儲けは悪だ!一生懸命働くのはブラック企業だ!」 なんて誰が言ってるの?

2012年4月3日 火曜日

この記事を見てとても違和感があったんだけど、本当にそんな若者が増えているんだろうか?
まず、
「一所懸命働くことを是とする会社を、一律に「ブラック企業」とか呼ぶ風潮に対する疑問です。」
というのがひどい。そんな風潮がどこにあるんだ?
従業員を過労死になるまで使い倒して「労務管理に問題はない」と言い放ったり、残業代も出さずに休日出勤まで強要するような労基法無視の企業が「ブラック」と叩かれているんじゃないのか。

若い世代でネガティブな労働観が増えている! お金儲けは悪だと洗脳され、会社ギライが多い日本人|これからの日本について、自分のアタマで考えよう!|ダイヤモンド・オンライン

藤野  その背景には、「会社嫌い」、さらには「労働嫌い」の思想が広まっていると思うんです。「働くことによる社会的な充足感」をすごく否定する雰囲気が広がっている。なるべく働かない方がいいという……。
(略)
僕が言っているのは、一所懸命働くことを是とする会社を、一律に「ブラック企業」とか呼ぶ風潮に対する疑問です。それは、「労働というのは、ストレスと時間とをお金に換えている」というような考え方であって、今、こうした労働に対するすごくネガティブな価値観が急速に広がっている気がするんです。
(略)
ちきりん お金儲けを悪だと考えるのは、特殊な思想の方々に洗脳されてますよね。ただ、そう思う一方で、今の若者たちがそういう洗脳に陥ってしまうのは、彼らだけの責任とも言えないかな、とも感じます。
若い世代でネガティブな労働観が増えている! お金儲けは悪だと洗脳され、会社ギライが多い日本人|これからの日本について、自分のアタマで考えよう!|ダイヤモンド・オンライン”

そんな風潮、聞いたこともない

今問題とされているのは、残業代や給与面でまったく見返りがないのに、「やりがいをもて」「一生懸命働け」と労働を強要することの是非だろう。
一昔前だったら、それでもよかったのかもしれない。暗黙の制度としての「終身雇用」が機能していれば、「若いうちは給料が安くても、頑張れば昇進・昇給できる」「長く勤め上げれば退職金がもらえる」という、生涯賃金ベースで判断することが出来るからだ。

しかし今はそんな時代ではない。上を見ても横を見ても、そんなうまい話は、よほどの大企業でもない限りまれである。

長く務めていても、昇給は全く期待できない。企業はリストラで業績が回復しても、内部留保に余念がない。
終身雇用どころか、業績次第ではいつ人員整理されてもおかしくないし、会社自体がいつまで存続しているかもわからない。

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そんな状況で、企業が収益をあげようとしたら、例えばワタミのように低価格でサービスを提供するためには、「コストを抑える」「人件費を抑える」となって、結局安い給料で長時間働かせる、ということになってしまう。

やりがい詐欺

彼らの言うことには、「それでもやりがいを持って、仕事そのものに充足感を持とうよ!」ということらしいのだが、それはつまり金の代わりに「やりがい」という正体不明の何かで報酬を埋め合わせしよう、ということだろうか。(なにせ「やりがい」はコストゼロで無限に湧いてくるらしいからなぁ。)

それってやりがい詐欺じゃないのか。
仕事のやりがいは、ないよりあったほうがいいが、やりがいだけあっても生きていけない。

若者は労働自体を忌避しているわけではないと思う。健康や精神をすり減らしてまで働いて、その正当な見返りを欲しがっているだけだ。上の世代が当たり前に享受していたものが、今の若い世代には手に入らないのだから。

昼夜の区別なく一生懸命働かされるとしても、例えばゴールドマンサックスのように、20代で給料が1000万を超えるような会社だったら文句を言わない人も多いだろう。
今だったら、モバゲー開発会社のように、ビジョンも何もなくとも「怪盗ロワイヤル開発者にボーナス3千万円」というような景気のいい話で「ハイスペックな奴隷」が集まってくる。

結局、若者叩きをしたいだけなのでは?

そんなことを知ってから知らずか、
「一所懸命働くことを是とする会社を、一律に「ブラック企業」とか呼ぶ風潮」
「お金儲けは悪だと洗脳され、会社ギライが多い」
なんて若者叩き記事を一生懸命書いているようでは、ダイヤモンド・オンラインの頭の硬さが心配になってしまう。

むしろ、「金は払わないけどやりがいがあるんだから頑張れ!」という暴論こそが、「カネのことでがたがた言うな」→「金儲け=悪」という特殊な思想なんじゃないのか?

いやほんと全く、自分の頭で考えよう、ですよね。


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コメント / トラックバック 15 件

  1. quatroshe Says:

    なんでもかんでもマルクス主義のせいにしてればオツム的には楽だろうけど、この国の金儲け悪徳視観って、マルクス主義なんか影も形もない頃の、江戸期の商人邪悪視観あたりからの流れなんじゃないの。

  2. kagurakanon Says:

    会社という宗教。都合の悪いことは若者の〜論に転嫁出来るしねえ。

  3. Elie Says:

    「やりがい詐欺」 とても的を得た言葉だと思う

  4. Ataro Says:

    タイトル見て、若者はグダグダ言ってないで働けって記事だと思ったら
    真逆だったでござる

  5. myogab Says:

    その「やりがい詐欺」の行き着く先が「国家のため」であり「靖国で会おう」。先の戦争も、軍閥財閥に独占され枯渇した市場の中で、精神的対価しか無くなっていた故だろう。椅子取りゲームは死なせるほど安上がり。

  6. tak4hir0 Says:

    「お金儲けは悪だ!一生懸命働くのはブラック企業だ!」 という暴論 | 九十九式

  7. anigoka Says:

    居もしない仮想敵を作る藁人形製造業はあーゆー輩(ベーコンマフラ-一味)の常套手段

  8. atoh Says:

    【参照】古代少女ドグちゃん #5 妖怪 カニ光線

  9. chanbara Says:

    自分に都合の良い設定の藁人形をこさえる→その藁人形を叩く→猫起きる / まあ、顧客獲得してメシを食うために色々テクニック()を駆使しなきゃいけないのかもしれないけどね、ちきりん氏に限らず。

  10. Louis Says:

    ちきりんさんの何が「時代の寵児」たらしめてるかちょっとわかりました

  11. kowyoshi Says:

    ちきりんへのマジレス、お疲れ様です(ペコリ)

  12. agricola Says:

    利潤追求は御企業様にだけ許された特権なのでしょう。

  13. norton3rd Says:

    あのオバサンがなぜ人気があるのか本当にわからない

  14. あきら Says:

    30代、飲食関係者です。
    なるほど、経営者が夢を語れない時代になってきていると思います。というか、時代ではなく経営者の年齢のせい?
    この前転職して海外から日本に戻って来た後輩の言葉を聞いてインスパイアされました。
    「キャリアアップしながら、それで仕事を続ける目標は?」
    「10年後とかに、今の自分と同じ年の若い奴らに夢とか充実感を得られる仕事を与えられるようになること。やっぱ独立しても、会社員でも、それは仕事をする最大の目標ですよね。。。」
    ショック。。。
    志が違う。
    原点とは言え、
    自分が食うために仕事をするのが当たり前だと思っていたのが、恥かしい。。。
    でもそんな経営者がいっぱいいるんじゃないの?

  15. 宮本 Says:

    金だけのために作業をしていたら精神が死ぬし、やりがいだけで金がなかったら実際に死んでしまいますし…。
    そこのバランスが重要なんじゃないかと思います。
    やりがいも金も存分に得られる仕事につくためには、当人の並々ならぬ努力や運や、色々必要になってくることでしょう。その後輩氏はなかなか立派な若者ですね。そういう志を持った若者には経営者になってどんどん活躍していってほしいものです。

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