極私的アイドル論 『アイドルは人間ではない』 (鈴木愛理のバス騒動について)
℃-uteの人気メンバー鈴木愛理の騒動を見ていて、アイドルについて少し思うところがあったのでここに記しておく。
結論から言うと、鈴木愛理はアイドル不適格であると思っている。
勿論、忌むべきは盗撮してそれをネットにあげた行為だし、交際・デートをしていたならまだしも、単に通学時に2人でいただけで騒ぎすぎじゃないか、という意見もわかる。
しかしそれでもやはりアウトなのだ。その理由を説明しよう。
事件の発端
ハロー!プロジェクト所属のアイドルグループ・°C-uteのメンバーである鈴木愛理が、男性と仲睦まじげに通学する写真がネット上に流出し、ファンの間に波紋が広がっている。相手の男性であるイケメンハーフモデル・Raycley(レイクレイ)は、「ただの友達」と交際を否定している。
“ハロプロのエース”°C-ute・鈴木愛理に交際疑惑? 相手のイケメンモデルは否定 (RBB TODAY) – Yahoo!ニュース”
通学バスで同級生と二人掛けの席に並んで座っているところを後ろから盗撮された写真がTwitterに上げられ、そこから狼で祭になった今回の騒動。
相手も否定している通り、交際疑惑については考えなくていいのではないかと思う。(ただし勉強(語学)を教えてもらうなど、どうやら2人の距離が縮まる過程にあったようではあるが)
撮られた写真も決定的なものではない。ただ2人で仲良く並んで通学ベクトルしていただけの、AKBのスキャンダル写真に比べれば可愛いものだ。
アイドルファンの反応
しかし、AKB48やももクロと比べてしまうと、℃-uteの知名度は、まだアイドルファンの間で留まっている状態。今回の騒ぎは、少々大げさにも感じるのだが……。
「“アイドル性”の高さゆえでしょう。彼女は、アイドルに要求されるすべての要素を、完璧に満たした女の子なんです。ルックスはもちろん、性格、歌唱力、ヲタ対応、両親がプロゴルファーで超金持ち……もう上げたらキリがない。AKB48やモー娘。のヲタの間でも、『鈴木愛理は別格』という意識を持っている人は少なくない。
人生の大半をアイドルに捧げてきた彼女が、大学に入学しリア充写真を流出させてしまった。これはヲタにとって、完璧なアイドル像がガラガラと崩れる大事件なんですよ!」(アイドルライター)
矢口の後輩、℃-ute鈴木愛理のイチャラブ写真流出「すべてが終わった……」とドルヲタ過剰反応のワケ – 日刊サイゾー”
記事タイトルにわざわざ「矢口の後輩」とかつけたりと、相変わらず下衆センスが光るサイゾー。(大げさなのは℃-uteの知名度が低いからというより、ただ通学バスで一緒に座っていただけだからだと思うがそれはさておき)
このアイドルライター氏の反応は、割と一般的なドルヲタ、ハロヲタ、ショックを受けている℃-uteファンの意識に近いんじゃないかと思う。
とうとう公式謝罪
Twitter→2ちゃん(狼)→まとめサイト→ネットニュース→Yahoo!ニュース配信→狼→まとめサイト
という炎上スパイラルに乗り、「鈴木愛理騒動」はかなりの勢いになった。騒ぎがこれ以上広まることを恐れたのか、ここで事務所は異例の措置に踏み切った。℃-ute公式ブログでの、鈴木愛理本人による謝罪更新である。
いつも応援してくれるファンのみなさんへ
こんばんは。
鈴木愛理です。いつも応援ありがとうございます。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが大学の帰り道にバスの中で写真を撮られてました。
写真は私本人です。
マネージャーさんからいろいろ聞きましたが、写真以外は根も葉もない話です。
私の軽率な行動で色々と心配をおかけしてすみません。
こんな騒ぎになってるなんて、驚きを隠せないし正直どうしたらいいかわかりません。
隣に男性が座った事は事実ですが、私とは知り合いという以外はなにも関係ないです。
武道館を目の前にした大切な時期に
私や℃-uteを応援してくれてる方に
心配かけてしまい、本当に申し訳ありません。男性の方にも迷惑かけて申し訳ないと思っています。
これからアイドルとしての自覚を改めて持ち直し、℃-uteとして力をだしていけるよう、日々精進していきます。
これを受けて、同情的なファンの反応は、おおむね次のような感じだった。
「盗撮なんてするほうが悪い」
「男友達と話すだけなら問題ない」
「アイドルだって人間なんだから」
「大学生活くらい普通に送らせてあげたい」
どれも一見、穏当でまともな意見のように見えるが、本質からずれている。
アイドルは人間ではない
付き合っていようがいまいが、「二人きりで通学している時点でアウト」なのである。
盗撮されなければ…という意見もあるが、そもそも「撮られたらアウトな状態」を衆目にさらして通学ベクトルしてる時点で不適切だったのだ。
「そんなこと言ったら愛理は普通の大学生活を送れないのか」
「アイドルだって人間じゃないか、男友達くらいいたっていい」
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という擁護派の意見が聞こえてきそうだが、それについてはこう答えよう。
その通り。もちろん、アイドルに普通の大学生活を送ることは許されない。
AKBの総監督が仲間のスキャンダルに際して「アイドルだって普通の人間だから…」とジェロニモ(だってオラは人間だから…)のようなことを言っていたが、それは違う。
あえて誤解を恐れず極論を言わば、アイドルは普通の人間ではない。
衆生の手の届かないところに存在し、擬似的な聖性を獲得した存在にして人々の生きる希望、それがアイドルである。
「推す」とは極めて信仰に似た行為だ。見よ、祭典の場に無数に煌めくネオンカラーの蝋燭を、壇上で羽衣を来て舞い踊る天女を!おお、そして神楽に向かって一斉に差し伸べるロミオの捧げ手は、信徒が天上人に捧げる祈りの手に他ならない!
『どっちか一個 選べないけど…』
…ただしそれは選択の問題であって、いつでも人間界に戻ることはできる。だがアイドルでいる以上は天上人であるべきなのだ。
思えば鈴木愛理は、完全に浮かれていた。そもそも大学進学を伏せておくメンバーもいる中、積極的に大学進学をアピールしていたのが彼女だった。タモリ倶楽部では「サークルにも入りたい」とまで発言し、公式ブログでは頻繁に大学の話題を投稿している。
個人として大学生活を楽しむのは大いに結構だ。しかしそんな普通の大学生の姿を見せれば見せるほど、アイドルとしての聖性は少しずつ減じていく。
これでは推せない。我々が推すのは「アイドル=偶像」であって、「歌のうまい女子大生」ではないのだ。ハロプロのパフォーマンス主義、メンバーのストイシズムに魅せられてきたファンならなおさらだろう。
℃-uteリーダーの矢島舞美は、「大学に行ったらどちらも中途半端になる」と考えて進学を断念し、℃-uteに集中することにした。
Berryz工房の嗣永桃子(ももち)は大学に進学しているが、仕事の多さと教職課程の内容から察するに、おそらく講義時間以外に大学で過ごす時間はほとんどないだろう。
つまりアイドルの進路選択とは「大学進学をしない」か「進学しても普通の大学生活を送らない」かのいずれかであって、「大学進学して普通の青春も楽しみたいけどアイドルも辞められない」は成立しないのだ。
よしんば成立したように見えても、それはもはやアイドルではない別の何かだ。