邦楽ロックの名曲 BODY『I Love You』のカッコよさとボーカルの小ささについて
HDDを統合してiTunesで音楽ファイルを整理していたら古い曲が流れ始めたので、つらつらと呼び覚まされるままに雑感を書き綴る試み。
最初に本稿の趣旨を語っておくと、冒頭に上げた動画、BODYの『I Loe You』がカッコイイ、ということが言いたいがための2000字なので、「その通りだ、俺も『I Love You』と名のつくポップソングの最高峰はこの曲だと思う」と最初から同意できる人は適当に読み飛ばしてくらはい。
あと書こうと思った衝動としては、Amazonでカスタマーレビューでも見ようと思ったら、商品説明に
商品の説明
メディア掲載レビューほか元デランジェのふたりが結成したことで,その筋ではデビュー前から話題になっているバンド,待望のデビュー作。楽曲の過半数はこのふたりが手がけていて,いわゆる化粧系のバンドの音楽と理解して,誤解はなさそう。
— 内容(「CDジャーナル」データベースより)
Amazon.co.jp: BODY : FLAME – 音楽
とかハナクソみたいなことが書かれていたのも一因。その筋て。いわゆる化粧系て。興味無かったら無理して書くな、と。もちろん、いわゆる職業ライターは無理してでも字数を埋めなければいけないものと理解して,誤解はなさそうだが、それが仕事なら最低限の質はクリアしろ。
アルバムバージョンの異様な音量バランス
まあいいや。冒頭には「古い曲が流れ始めた」と書いたけど、実際に流れたのはアルバムからエンコして取り込んだこちらのバージョンである。
当時、プレーヤーにセットして一聴した瞬間「コンポ壊れた!?」と思わず自分の耳を疑ったほど、ボーカルが小さい。今あらためて聞いても本当にボーカルが小さい。カラオケバージョンなんじゃないかと間違うくらいボーカルが小さい。本稿を書く前にGoogleで「Body I love you ボーカル 小さい」で検索してしまったほどボーカルが小さい。逆に言うと、ギターとドラムが異様に突出しているのだ。
このBODYというバンドは、D’ERLANGER解散後にCYPHERとTETSUが組んだバンドなんだけど、どうも採用活動があまりうまく行かなかったらしくて、シーン的には無名の新人ボーカルと新人ベーシストを発掘というか抜擢してきてリリースしたのがこちらのデビューアルバム。
そういった経緯から、新人の音を無理やり押さえ込んだのだろうか?と当時は思ったんだけど、どうも「レコーディング時のスタッフとの確執」が原因らしい。がどういう確執で、どういう経緯でこのような仕儀に至ったのかは未だ持って不明。(ご存じの方がいらしたら教えてください)
が、しかしその瑕疵を補って余りあるほどこのアルバムの楽曲的完成度は高く、特にシングルカットされたこの曲は、綺麗なマイナー調のポップなメロディを硬質でアタックの強い骨太な演奏が支え、その筋というかストレートなビートロックとか叙情的な歌謡ロックみたいなものが好きな人にはたまらない楽曲になっていると思う。
いかにもCYPHER節なカッティングギターと、手数の多い菊地哲のドラムがバカスカとフィルインされたトラックは、確かにそれを聞いているだけで十分気持よく、この特殊なミックスバランスも、当時高校生バンドでこれをコピーする際に「こりゃ聞こえやすくていいや」と思ったものだが、やっぱりボーカルが小さい!
「新人で下手くそなんだからテメーこんなもんでいいんだよ」とかバンド内で虐げられてたのかなあ、と邪推もしたけど、よく聞くとこのボーカル、ちゃんと上手い。こういういわゆるビジュアル系ビートロック向きのいい声をしているし、高音の伸びもいい。
シングルカット版はちゃんと聞こえる
実際、シングルカットされた音源では、さすがにプロモーション的にこれはまずい、という正常な判断力が現場にも働いたようで、PV音源(多分シングルと同一ミックス)を聞くと、割と普通にボーカルが聞こえる。
実は、あのあっという間のBODY解散後には、リミックス・アルバムが発売されていて、こちらではさらにちゃんと歌が聞こえる普通のミックスになっているのだ。(ちなみにこの事実は30分前に知った。)
BODYは短命に終わり、滝川&菊池コンビはすぐにCrazeというバンドを組むのだけど、この『I Love You』という曲は彼らの中でもマスターピースとして手応えのある楽曲だったようで、のちのちまで大事に演奏されている。
でも、やっぱりなんか違うんだよね。バンドの楽曲というのは不思議なもので、作曲者や演奏者が同じでも、その曲を作った時、吹き込んだ時にしか出せない空気感というのがあって、それは後から容易に再現したり超越したりできるものではない。(アイドルで言えば℃-uteの「神聖なるVer.」が…。いや、話がそれるからやめておこう。)
CRAZEバージョンの堕落ぶり
で、それは当人たちも感じていたのかもしれない。後にCRAZEでリリースした『I LOVE YOU』がこちら。
広告
申し訳ないが、はっきり言ってしまうと、凄くダサい。これ、こんな風にふざけて演る曲じゃないでしょう。 当人による楽曲蹂躙、これはセルフ自傷カバーとでも言ってしまっていいのではないだろうか。
かつてNirvanaが、TV出演した際に当て振り(オケを流して演奏したふりをする)に反発して(?)、完全にふざけてだらだらとした動きで皮肉パフォーマンスをしたことがあったが、あれはNirvanaの音楽性とか立ち位置とか、そういったものによってぎりぎり成立するかどうかのおふざけだ。
この『I LOVE YOU』という曲は、そもそも曲名からして直球で、曲もおもいっきりカッコつけてて、歌詞もクサいほどド直球のラブソングで、それをスピーディーでかっちりしたキメキメの演奏で演るからこそ生きる曲なのだ。
それを何に照れてるのか、自分のMVで(MVなんだから当て振りで当たり前なのに)途中から出てきてでたらめな動きをするというセルフ皮肉をして、あろうことか演奏までわざとルーズにしている。(BPMは測ってないが、最初と最後で明らかにテンポが違うし、ドラムもタメたり三連にしたりしてルーズにしている) 僕がフランス水兵だったら、一言「メルドー。」と言い捨てて席に戻っているところだ。
しかしそれでも、この曲自体は本当に素晴らしい。この曲がバンドの商業的な成功規模の小ささやボーカルの小ささによって、知名度が低いのは残念だ。
あと当時は気付かないふりをしていたけど、冒頭のPVを見るとやっぱりBOOWYですね。ボーカルは初期TERUよりもヒムロック。
その後の彼らは
余談ですが、ボーカルのNaokiは、悲劇的なBODY解散&ソロデビュー&消息不明から10年後に、往年の名バンドReactionの再結成ボーカルに迎えられるというロック活動復帰を果たし、2011年からは同じくBODYのベースだったMotokiと共にTHE LOVEROCK VIOLENTというバンドで活動中。
瀧川一郎と菊地哲の盟友コンビは、まさかのD’ERLANGERオリジナルメンバー再結成(2007年)でCIPHERとTETSUと名前を戻し、元気に活動中。
今はまたカッコよく決める方向に向き合っていて安心した。やっぱりこういうジャンルって普段着でやる音楽じゃないと思う。音楽の方向性は違うけど、速弾きで有名なジャパメタの重鎮、AIONのIZUMIがLUNA SEAのJ(当時ローディー)に語ったという「ええか、ギターは速く弾かなあかん。『味』は逃げや」なる言葉は至言だと思う。
L.A.レコーディングのニューアルバムトレイラー。
新曲。
ちゃんとカッコよさと正面から向き合っていてカッコつけてるのでカッコイイ。安心した。
最後に
久しぶりに更新した。久しぶりに更新して、仕事でもないし趣味でもないしバズ狙いでもないし、SNS半径2クリック位内に想定読者のいない文章を書いてスッキリした。あんまり語ったことないけど実は僕の音楽的バックボーンってこのへんにあって、でもそれは大人になってからまったく共有できる人がいなくて。
ネットでも僕がいた日記系の界隈の人たちの「青春時代のロック」ってロキノン系だったり渋谷系だったりするみたいで、それは例えばテキストサイトクラブイベントでフリッパーズ・ギターがかかるとみんながワッと喜んだりするんだけど僕はよく分からなかったり。で、現在一番好きな音楽であるところのハロプロについては、ネットでも書く場所はいくらでもあるし、イベントでも語る場所があるのでアウトプット環境についてはとても充実している。
かくしてこのサイトはこういう風に、界隈とか需要とかお小遣い稼ぎとか一切考えずに、僕が好きなタイミングで好きなことを書く自由帳になりました。でもこれってサイト開設した2000年11月の、初期衝動にしたがって自由に書いていた頃に回帰したということなのかもしれない。そう、D’ERLANGERのように!