1話 /
2話 /
3話 /
4話(あらすじ:マジレンジャーショーに出演した宮本。馴れないステージに戸惑うまま、全くいいところなしで午前の部は終わった。自信を喪失して打ちひしがれる宮本。しかし、まだグリーンのことを信じている子供がいるのだった。あと1時間で午後の部が始まるが… )
勇気の証
改めて午前の部のビデオを見返して見ると、俺はステージ上でぼんやりしているだけではなかった。俺の演じるグリーンは、自分が敵と戦うところ以外では、ただ出番を待っているだけなのだ。
兄弟がやられているのに、自分の出番じゃないときはただただ眺めていた。自分がやられているときに、レッドが助けに来ると、「あ、俺の出番終わりだ良かった」と明らかにホッとしていた。子供たちがガッカリしたのは、本当はグリーンが弱かったからじゃない。
ヒーローとして大事なものを、俺が完全に忘れていたからだった。
あの子にそれを教えられた気がした。まだ俺のことを信じて待っている子供がいるんだ。例えひとりだけでもいい。落ち込んでる場合じゃないだろう、宮本! 俺は心の中で、緑の少年に誓った。グリーンはきっと活躍するぞ!
ヒーローにとって大事なのは、バク転だけじゃない。経験でもない。真に必要なのは
子供を決して裏切らない心だ。 それともう一つ。
立ち上がった俺の耳に、会場BGMで流れている
マジレンジャーの主題歌が聞こえてきた。
「魔法…それは聖なる力!
魔法…それは未知への冒険!!
魔法…そしてそれは、勇気の証!!!」
そうだ。このシリーズの主題は、
勇気だった! ピンチになったときに、誰かが勇気を発揮すると、天から新しい魔法を授かって難局を打破する、そういう話だったのだ。
かつて本物のグリーンも、一度は自信を喪失したことがあった。(
21話)しかし、勇気を出して、兄弟をかばってマンモスの前に飛び出し、自信と魔法を取り戻したのだった。
俺も…俺もやるぞ! …何を?
ヒーローを!
俺は勇気と決意を胸に、天幕の中にいるブランケン様に会いに行った。
「お願いします!もう一度、手を教えてください!」
信じてフューチャー!
午後の部が始まった。確かに回りは俺より経験も技量もある人たちだけど、一旦変身したら、俺は長兄、マジグリーンなんだ。
そう思えるようになると、今度は体が動いた。ブランケンの動きが、見えた。剣を受け止める。やられている芳香を助ける。ブランケンの手をはねのけ、蹴られてもすぐに身構える。会場の子供たちを助ける。
そして後半の山場が来た。ブランケンとマジレッドが、一騎打ちしながら2人とも姿を消す。そこに現われた冥獣と、レッドをのぞいた4人が戦うシーンだ。冥獣の圧倒的な力に阻まれ、ピンチに陥る4人。そこにレッドが助けに来るというシナリオである。
「グフォフォフォ…貴様らの力は、こんなものか!」
冥獣の前に打ち倒された3人を見て、俺の体は自然と兄弟をかばって前に出ていた。
「貴様…!?」
「うおぉーーーーっ!」 こんな雄たけびは台本にないし、マイクもないから客席には聞こえない。聞こえたかもしれないけど、どちらでもいい。俺は兄弟を守りたかったし、冥獣は強敵で、子供たちの声援が聞こえていた。
俺はとうとうマジでグリーンになった。 冥獣がまさに爪を振り下ろそうとするところを、レッドの魔法が直撃した。
ズバーン!
「大丈夫か、兄ちゃん!」
「カイ!」
「みんな、あきらめちゃダメだ! 母さんの言ってた言葉を思い出すんだ! 勇気があれば魔法が力を与えてくれる!」
「ああ、そうだったなカイ! 今こそ、兄弟5人の勇気を合わせるんだ!」」
「天空聖者よ、我らに力を与えたまえ!」
5人がそれぞれの武器を頭上に掲げる。
「な、なんだこの光は…!グオオ…!」
「今だ、いくぞみんな!」
「(うおぉーーーっ!)グリーン! マジスティック・アックス!」
「イエロー!マジスティック・ボーガン!」
「ブルー!ピンク!マジスティック・アタック!」
「レッド!マジスティック・ソード!」
ズバァーーーン!
「おのれ…マジレンジャアァァ…!」
やった! やり切った。子供たちの拍手が、歓声が5人の魔法使いを包んだ。最前列には、あの緑の子供の笑顔があった。お兄ちゃん、約束守ったぜ! 俺はガッツポーズで爆レスを送った。
楽屋に戻ると、一足先にはけていたブランケン様が待っていた。
「…やりゃぁ出来るじゃねえか。」
ブランケン様は、ぼそりとそうつぶやくと、握手会の整理のために出て行った。
「あの人が誰かを誉めるなんて、滅多にないことよ!」
ピンクがそう耳打ちしてくれた。
休んでいる暇はない。子供たちが待っている。もう一度だけ変身して、最後の握手会だ。
「魔法変身、マージ・マジ・マジーロ!」
真夏の陽射しの中、マジグリーンになった俺は颯爽と走り出た。
(おわり)