マジでグリーンの人になった(4)(終)

2005年8月25日 木曜日

1話 / 2話 / 3話 / 4話
(あらすじ:マジレンジャーショーに出演した宮本。馴れないステージに戸惑うまま、全くいいところなしで午前の部は終わった。自信を喪失して打ちひしがれる宮本。しかし、まだグリーンのことを信じている子供がいるのだった。あと1時間で午後の部が始まるが… )

勇気の証

 改めて午前の部のビデオを見返して見ると、俺はステージ上でぼんやりしているだけではなかった。俺の演じるグリーンは、自分が敵と戦うところ以外では、ただ出番を待っているだけなのだ。
 兄弟がやられているのに、自分の出番じゃないときはただただ眺めていた。自分がやられているときに、レッドが助けに来ると、「あ、俺の出番終わりだ良かった」と明らかにホッとしていた。子供たちがガッカリしたのは、本当はグリーンが弱かったからじゃない。

 ヒーローとして大事なものを、俺が完全に忘れていたからだった。

 あの子にそれを教えられた気がした。まだ俺のことを信じて待っている子供がいるんだ。例えひとりだけでもいい。落ち込んでる場合じゃないだろう、宮本! 俺は心の中で、緑の少年に誓った。グリーンはきっと活躍するぞ!

 ヒーローにとって大事なのは、バク転だけじゃない。経験でもない。真に必要なのは子供を決して裏切らない心だ。 それともう一つ。

 立ち上がった俺の耳に、会場BGMで流れているマジレンジャーの主題歌が聞こえてきた。

「魔法…それは聖なる力!
 魔法…それは未知への冒険!!
 魔法…そしてそれは、勇気の証!!!」

 そうだ。このシリーズの主題は、勇気だった! ピンチになったときに、誰かが勇気を発揮すると、天から新しい魔法を授かって難局を打破する、そういう話だったのだ。
 かつて本物のグリーンも、一度は自信を喪失したことがあった。(21話)しかし、勇気を出して、兄弟をかばってマンモスの前に飛び出し、自信と魔法を取り戻したのだった。

 俺も…俺もやるぞ! …何を?

 ヒーローを

 俺は勇気と決意を胸に、天幕の中にいるブランケン様に会いに行った。
「お願いします!もう一度、手を教えてください!」

信じてフューチャー!

 午後の部が始まった。確かに回りは俺より経験も技量もある人たちだけど、一旦変身したら、俺は長兄、マジグリーンなんだ。
 そう思えるようになると、今度は体が動いた。ブランケンの動きが、見えた。剣を受け止める。やられている芳香を助ける。ブランケンの手をはねのけ、蹴られてもすぐに身構える。会場の子供たちを助ける。

 そして後半の山場が来た。ブランケンとマジレッドが、一騎打ちしながら2人とも姿を消す。そこに現われた冥獣と、レッドをのぞいた4人が戦うシーンだ。冥獣の圧倒的な力に阻まれ、ピンチに陥る4人。そこにレッドが助けに来るというシナリオである。

「グフォフォフォ…貴様らの力は、こんなものか!」
 冥獣の前に打ち倒された3人を見て、俺の体は自然と兄弟をかばって前に出ていた。
「貴様…!?」
「うおぉーーーーっ!」
 こんな雄たけびは台本にないし、マイクもないから客席には聞こえない。聞こえたかもしれないけど、どちらでもいい。俺は兄弟を守りたかったし、冥獣は強敵で、子供たちの声援が聞こえていた。
 俺はとうとうマジでグリーンになった。

 冥獣がまさに爪を振り下ろそうとするところを、レッドの魔法が直撃した。
 ズバーン!
「大丈夫か、兄ちゃん!」
「カイ!」
「みんな、あきらめちゃダメだ! 母さんの言ってた言葉を思い出すんだ! 勇気があれば魔法が力を与えてくれる!」
「ああ、そうだったなカイ! 今こそ、兄弟5人の勇気を合わせるんだ!」」
「天空聖者よ、我らに力を与えたまえ!」
 5人がそれぞれの武器を頭上に掲げる。
「な、なんだこの光は…!グオオ…!」

「今だ、いくぞみんな!」
「(うおぉーーーっ!)グリーン! マジスティック・アックス!」
「イエロー!マジスティック・ボーガン!」
「ブルー!ピンク!マジスティック・アタック!」
「レッド!マジスティック・ソード!」
ズバァーーーン!
「おのれ…マジレンジャアァァ…!」

 やった! やり切った。子供たちの拍手が、歓声が5人の魔法使いを包んだ。最前列には、あの緑の子供の笑顔があった。お兄ちゃん、約束守ったぜ! 俺はガッツポーズで爆レスを送った。

 楽屋に戻ると、一足先にはけていたブランケン様が待っていた。
「…やりゃぁ出来るじゃねえか。」
 ブランケン様は、ぼそりとそうつぶやくと、握手会の整理のために出て行った。
「あの人が誰かを誉めるなんて、滅多にないことよ!」
 ピンクがそう耳打ちしてくれた。

 休んでいる暇はない。子供たちが待っている。もう一度だけ変身して、最後の握手会だ。
「魔法変身、マージ・マジ・マジーロ!」
 真夏の陽射しの中、マジグリーンになった俺は颯爽と走り出た。

(おわり)


この記事の評価は:

うーん…いまいち…ふつうですかなり良い素晴らしい (1 投票, 平均値/最大値: 5.00 / 5)
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コメント / トラックバック 40 件

  1. tragedy Says:

    面白かったです。このプロットで小説一本かけそう。

  2. 匿名 Says:

    すげぇ・・・。やべぇ、目から水が・・・。

  3. 匿名 Says:

    しかし、突然の通り雨で子供達は一人も残っていなかった。

  4. 匿名 Says:

    かっこいい!
    文章を読んでいるだけで体が熱くなりました。
    燃えてるマジグリーンが目の前で見えるようです!
    是非うちの近所にも来て欲しい!

  5. 匿名 Says:

    ええ話や。
    次回の出演も頑張ってや

  6. Number Says:

    ありがとう! マジグリーン!!

  7. 匿名 Says:

    7割ぐらい差っ引いてもw
    格好いいぞ宮本!
    じゃなくて、マジ・グリーン!!

  8. 匿名 Says:

    あれ、おかしいな。なんで目の奥が熱いんだろう・・・

  9. 匿名 Says:

    フィクション…じゃないよね?

  10. Says:

    主題歌を聴きたくなった・・・。

  11. 匿名 Says:

    マジに熱いぜマジグリーン

  12. 匿名 Says:

    決まったね

  13. rima2005 Says:

    わあわあお疲れ様でした!いい話だったー

  14. TheMan Says:

    感動の最終回。

  15. ustar Says:

    ええ話やった

  16. nonomiracle Says:

    ビエエエーン!みどりのおにいちゃんの超感動の最終話!ヒーローって、、、すごい!!!

  17. shidho Says:

    本当の意味で、中の人などいないわけだ。

  18. cayo Says:

    おかあさん、ハンカチ!

  19. momma Says:

    マジグリーンと握手したい 辻ちゃんのDVDを持って

  20. stealthinu Says:

    マジグリーンまじでかっこいいよ。これからもがんばれ。

  21. nekoprotocol Says:

    マジ感動したぜ、おにいちゃん。あと、ほんとみんな子供が嫌いだなぁ。

  22. screammachine Says:

    これぞビルドゥングスロマン。

  23. K2Da Says:

    完結

  24. taigo Says:

    宮本ザ・ニンジャ ヒーローとは 第四話 オレは泣いた

  25. 匿名 Says:

    ちと、じーんときた。

  26. 匿名 Says:

    で、オチは?

  27. 匿名 Says:

    非常に面白かったです!

  28. 匿名 Says:

    こう、胸にグッと来ました…
    欲を言っちゃえば、やり遂げた後の子供たちの反応なんか知りたかったり

  29. 0029 Says:

    10年ほど、戦隊をはじめとしたキャラクターショーをやっている者です。
    初舞台、お疲れ様でした。色々と得る物があって、有意義な仕事だったようですね。

    ただ、僭越ながら(この仕事の先輩として)少々キツい言い方をさせて頂けば、
    >俺はとうとうマジでグリーンになった。
    と書かれるには、今の段階では早すぎるかとも思います。
    アクション(に限らず仕事は何でもそうですが)は、
    こういった壁にぶつかっては乗り越える事を
    何十回・何百回と経験して次第にレベルアップしていく物ですから…。
    (私自身、戦闘員や怪人を2年、その後ヒーローに入って3年ほどで
     ようやく色々な物を掴んで来た感触を得ました)
    精神面の支え(ヒーロー役の誇り)を持つ事が重要なのは確かですが、
    それだけでどうにもならない事もありますし。

    これで満足する事なく、
    厳しい先輩が「やれば出来るじゃないか」と評してくれたその努力を
    これからも保って向上して下さい。子供達の夢を裏切らないためにも。

    不躾な長文、失礼致しました。

  30. 匿名 Says:

    燃えました!
    すげぇ頑張ってる姿が
    ひしひしと伝わりました。

    ただ…
    >夏休みの子供たちのいい思い出になれれば
    幸いである。子供は嫌いだけど。
    >僕も嫌いなんですけどね子供…。あいつら
    馬鹿だから…。僕のこと本物だと信じて疑わ
    ないんですよ…!

    これには正直引いた。
    心の中に留めておいて欲しかった。

  31. 匿名 Says:

    ハッピーエンドでよかった。
    感動しました。

  32. 匿名 Says:

    段取り芝居やっちゃダメってのは、役者の基本。
    スタントだって役者やんなきゃダメです。
    ヘタにフレーム知ってる人は、すぐにアウトして
    休む癖が付いてるから、それがモロに出たんですね。
    舞台とカメラは別物って事、少しは判られたんじゃないですか?
    板を踏んでる間はずっと役者。それを忘れないで
    くださいね。

  33. 匿名 Says:

    >子供嫌い
    照れ隠しでこう書いてあるんだと解釈しました。
    子供の疑うことを知らないまっすぐな視線と気持ち、照れずに受け止めるには難しいのかも。
    プロフィールがマジグリーンになったのは笑った!

  34. 宮本 Says:

    みんな、沢山のコメントありがとう!

    >>1
    マジで決めたぜ!

    >>id:tragedyさん
    これだけでも20枚分くらいあるから、頑張ればなんとかなる!?

    >>3
    心の汗だ!

    >>4
    ズコーーーッ!

    >>5
    本当に暑かったんですが、それ以上に熱くなりました!

  35. 宮本 Says:

    >>6
    1回きりのつもりでしたが、もうちょっとだけやってみようと思います。

    >>7
    応援ありがとう! Ъ

    >>8
    ちょっ…差っぴきすぎ!? ありがとう!

    >>9
    それは、勇気の証だ!

    >>10
    実話を元に再構成したWEB日記です。

  36. 宮本 Says:

    >>11
    未だに主題歌を聴くと熱くなります。
    君が超えたいものは何? 大空、逆風? 昨日の自分?

    >>12
    マジに決めたぜジルマ・マジカ!

    >>13
    どっかいっちゃった

    >>14
    ありがとうございます!

    >>15
    俺も俺も。

  37. 宮本 Says:

    >>16
    最初はそこまで書こうと思ってたんですけど、そのあたりは想像で補完していただくほうが粋かなと思って書きませんでした。(喜んでもらえました)

    >>17
    ご意見、非常に参考になります。これからも精進してまいります。わざわざの長文、ありがとうございました。

    >>18
    ありがとうございます!
    ただ、>>20の方もいってますが「子供が嫌い」はその…。
    野暮を承知でマジレスすると、嫌い嫌い言っておきながらどう見てもオマエ好きじゃねーの?という、まんじゅうこわい方式の修辞法です。

    >>19
    はい。今回はとてもよい勉強になりました。肝に銘じます。

    >>20
    ちょっ、まっ、嫌いですよ…! 何言ってるんですか! だってあいつらバカだし、生意気だし、純粋だし、素直だし…
    プロフィールは気付いたら変わってました。

  38. 匿名 Says:

    先に書いてる人いましたけど
    プロフィールの写真いいですよね。
    Wミュージカルレビューの頃の半田健人くんとか、宮本さんのマイブームっぷりがわかるようでスキです。

  39. migiri Says:

     マジにマジレンジャーな最終回。

  40. akimokr Says:

    王道パターンをすかっとやられると、いいなぁ

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