マジでグリーンの人になった(3)
1話 / 2話 / 3話 / 4話
(あらすじ:マジレンジャーショーに出演する
ことになった宮本。馴れないステージに戸惑うまま、全くいいところなしで午前の部は終わり、握手会が始まるのだった! →第一回 第二回)
マジ衣装について
ショーが終わると、颯爽と走って楽屋テントに駆け込む。変身スーツを着て人前に出ている以上、ステージ上でなくとも常にキビキビと、ヒーロー然とした動きをしていなくてはならないのだ。実際は暑くて倒れそう、というのもある。変身していると、本当に暑い。今日のN市は快晴で、日中の気温は34℃を超えている。Tシャツ一枚でも暑いくらいなのに、ヒーローはものすごく暖かい格好をしている。
まず、下にスパッツや全身タイツを着ている。これは衣装に汗を染み込ませないためと、下着の線などを見せないためである。その上にナイロン、ポリウレタン製の密封性の高い衣装を着る。背中にチャックのある、ツナギ状のものだ。さらに、面に髪の毛を挟まないための“下面”と呼ばれるマスクをすっぽりとかぶっている。
そしてフルフェイスの面。頭頂部にちょうつがいがあり、前と後ろで2つに分かれた形状である。中には発泡スチロールのブロックが貼り付けてあり、衝撃吸収と位置固定の役割を果たしている。かぶってみると、思った以上に視界が悪いことに驚く。剣道の面よりも暗く、空手の面よりも息苦しい。早くも酸欠気味だ。
面の正面に空いた穴を通して見ているため、視界が暗いのはもちろん、見える範囲も相当せまい。自分の正面にたった人間の、鼻の下からみぞおちのあたりまでしか見えない! これで立ち回りをするのだから、並大抵の労苦ではない。
案の定、未経験の宮本グリーンはほとんど立ち回りが出来ず、ブランケンにどつき回され、転がり、ボロボロの出来だった。戦闘員より弱いグリーンであった。
テントの中で、面だけを取って5分ほどぐったりする。外では衣装を脱いだブランケン様が握手会の客を並ばせている。
「よし、準備できたぞ」
ブランケン様がレンジャーを呼びにきた。
「待て。変身だけ入れてこう。」
そういってブランケン様はワイヤレスマイクを手にとると、
「魔法変身!マージ・マジ・マジーロ!」
と叫んだ。器用な人である。
マジ握手会
握手会には、250人のちびっこが列をなしていた。最初は立って並んでいたが、メインの客層が4歳くらいなので、威圧感を与えないために片膝をついて握手をすることにした。ずっとしゃがんでいると足が痛くなってくるが、仕方ない。子供とコミュニケートするときは、子供の目線になるべき、というのは俺の持論だ。こども嫌いだけど。
握手会には、個別ファンの子供が沢山いた。全身を推しカラーで統一している子、なりきりセットで変身している子、お面だけかぶってる子、推しレンのフィギュアを持っている子。そんな中でも、グリーン推しの子が意外と多かった。これがアニキ効果か? 俺はちょっと嬉しくなってとても丁寧に握手をしたが、なぜかグリーン推しの子たちの顔は、一様に曇っている。
「グリーンよグリーン。嬉しくないの?たっくん。」
「…だってよわいんだもん」
俺は冷水を浴びせられたような気がした。そうだ。さっきの俺ときたら、全くいいところがなくて、ピンクやレッドの足を引っ張っていただけだった。
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「ほら、グリーンよ。もっと頑張れって言ってあげなさい」
「……。」
グリーン推しのみんな、すまん。ふがいないお兄ちゃんですまん…!
握手会の後、第一部と第二部の間の休憩時間に、ブランケン様に謝った。
「すみません、全然手が入ってなくて…」
「俺のところはいいけどよお、お前だけ全然戦ってねえじゃねーか。ちゃんとバトルしろよ」
ビデオを確認して、ブランケン様の言っていることがわかった。僕が今まで練習していたのはテレビサイズだったため、やられてカメラからフレームアウトした後はぼーっとしてても良かった。しかし、ステージ上はそうはいかない。最大でも9人しか上がらないステージの、主役のうちのひとりなのだ。常に気を張って、目の前に敵がいるときの動きをしていないといけないのだ。モーニング娘の気持ちが少しわかった。俺の演じたグリーンには、TVでの頼もしさやたくましさのカケラもなかった。
もうダメだ。やっぱりこんなの無茶だったんだ。俺はヒーローなんかになれない。もう帰ろうかな…。午後の部は誰かにかけもちしてもらって…。
着替えてテントを離れ、弁当にも手をつけずに木陰でひとり打ちひしがれていると、親子連れが通りかかった。子供は緑色の服を着ていた。
「ほら、2回目が始まるまであと1時間もあるんだから。もう帰るわよ?」
「だってグリーンが…」
「グリーンはもう握手もしたじゃない」
「ぜんぜんかっこよくなかったよ」
「だからもう帰ろう。ね?」
「きっとおなかがいたかったんだよ。ほんとのマキト兄ちゃんはあんなんじゃないもん!次はきっとかつやくしてくれるよ!!」
俺は泣いた。
(つづく!)
→最終話
2005年8月24日 at 01:00
ちょっと、おもろい。
2005年8月24日 at 01:02
ありがとう!
2005年8月24日 at 01:31
子供なんてぶっ飛ばせばいいじゃない
2005年8月24日 at 03:50
すげぇ泣ける。
こういう話大好き、頑張って!
2005年8月24日 at 04:44
俺も泣いた。そして笑った(w
2005年8月24日 at 05:39
しまった、胸にぐっときてしまった。
宮本さんガンバレ。
自分の見た某地方のマジレンショーでは
マジレッドが下腹ぽっこり体型で
一人だけ汗染みがものすごくって別の意味で泣けた。
2005年8月24日 at 05:48
頑張れ!グリィィィィィィィンンンン!!!!!
2005年8月24日 at 08:06
くそお…負けるなマジグリーン!
2005年8月24日 at 08:45
能『安宅』のツレの二人目をやったときも、立ち位置とか型付け(振り付けみたいなもの)大変で、「モーニング娘。って、こんなんなんだなー」と思ったぐらいです。(参照は下記URL)
http://www.nohbutai.com/contents/05/01a/1ataka.html
(ページの下の写真の前から二人目に相当)
マジグリーンも、マジで大変だったでしょうね。
能装束も、着るだけで10?15kg相当ありますから、お気持ちは痛いほどわかります。(苦笑)
2005年8月24日 at 09:09
なんていいお話なんだろう……読んでるこっちもじーんときてしまいました。
この後のお話も楽しみです!
2005年8月24日 at 13:42
うっ…うっ…グリーンのおにいちゃんがんばって!!涙なしでは読めません
2005年8月24日 at 14:53
おにいちゃん・・・
2005年8月24日 at 16:38
今度ヒーローショー見に行ったとき、オレ…泣いちゃうかも
2005年8月25日 at 02:51
頑張って・・・!
2005年8月25日 at 11:43
>>4
応援ありがとう!(ガシッ)
>>Numberさん
ありがとうございます。ご無沙汰です。マジレンジャーは涙と笑いの人情ヒーローです!
>>6
ありがトン!
レッドが中年はつらいなぁ…! 怪人やってればいいのに。
今のレンジャーには3枚目キャラがいませんからねえ。
>>津短くん
ありがとォォォォオオオ!
2005年8月25日 at 11:44
>>とさん
天空聖者よ、我に力を!
>>青島玄武さん
おお、伝統芸能。(「ツレ」でツンデレを連想してしまった)(馬鹿)
これはギュギュっと混み合ってて大変そうですねぇ。
>>10
ありがとうございます!このままじゃ終わりませんよ!
>>11
僕も嫌いなんですけどね子供…。あいつら馬鹿だから…。僕のこと本物だと信じて疑わないんですよ…!
>>12
マジで決めるぜ!
2005年8月25日 at 12:17
うぅ、ちょっと泣いた。
子ども関連話嫌いなのに。
2005年8月25日 at 23:27
宮本ザ・ニンジャ ヒーローとは 第三話
2005年8月26日 at 03:46
やばい感動した
2005年8月30日 at 01:19
マジに泣ける第3弾。