旅行記の書き方 3原則

2010年8月24日 火曜日

(メタ旅行記3部作、完結編…)
色んな旅行記や、人々の旅日記を読んで、また自分でもちょろっと旅行日記を書いてみて、自分の中で旅行記の書き方の原則が見えてきたので、文章化しておきます。内容的にはオーソドックスというか当たり前のことではありますが、当たり前のことを完璧にやり抜くのが一番強力なんです。

1.ちゃんとその場所の説明をする

有名な場所だったりすると、その場所の説明をするのがちょっと面倒になったりする(「わざわざ書かなくてもみんな知ってるでしょ」「Wikipediaに書いてあるし」)が、読み手が必ずそこを知っているとは限らない。


少なくとも旅行記として世に発表するからには、読み手の立場に立たなくてはならない。これは、ブックレビューで言えばあらすじの部分にあたる。レビュー(旅行記)自体が面白ければ、例えその本を読んだことがなくても(そこに行ったことがなくても)、面白く読める。ただし万人に向けた読み物として成立させるためには、前提条件の共有が必要。
その場所の地名はもちろん、歴史的背景、町の情景などを描写するといいだろう。

良い例

ノモンハン村はおよそ100世帯、約500人が済む寒村だった。ノモンハンという不思議な地名は、ラマ教の僧侶の役職名に由来しているという。
(中略)
掘っ立て小屋のような粗末な建物がパラパラと散在していたが、放っておけばそのうち自然と草原(雪原)に帰ってしまうような、そんな雰囲気があった。あたりを牛が野良猫のようにうろついていたりもする。
そんな静かなノモンハン村の近郊で、1939年、日本とソ連が戦ったことがあった。日本でノモンハン事件やノモンハン事変と呼ばれている武力衝突だ。
Amazon.co.jp: 僕の見た「大日本帝国」 (角川ソフィア文庫): 西牟田 靖: 本

2.自分のできごとを書く

場所の説明をするのは必要だけど、かといって「ここは世界遺産で~~」「19世紀に~」と、ガイドブックに書いてあることを説明するだけで終わってしまっては、「あなたの」旅行記である意味がない。行かれなかった友人に語るがごとく、一緒に行った人と思い出を語り合うがごとく、一体その場所で「自分に」何が起こったのか、またそれを目にして何を思ったのか。自分を中心に、自分の言葉で書くことも必要。一番おもしろいのは、現地の人と交わした会話を使った体験談。会話文は、必要に応じて日本語にして書くと良い。

良い例

一旦木彫りの捜索を打ち切り、今度はZIPPOライターを探すことにしました。ZIPPO集めるの趣味なんですよ。で、その土地土地のデザインが施されたZIPPOがほしいわけなんですけど、これが見事なくらいバリ風のZIPPOがない。なんでバリまで来てこんなの買わなきゃいけないのっつーくらい、こてこてアメリカンなデザインばっかりです。ぶっちゃけかっこよくなくていいんです。その土地に行ったという思い出としてほしいわけですから。で、ZIPPO売ってる店をしらみつぶしに当たっていたら、ベースボールキャップをかぶった若いバリ人に話しかけられました。こいつの日本語は今まで出会ったバリ人の片言とは違って、ネイティブの日本人レベルの発音でした。しかもめちゃめちゃフランクで話が上手い。「あーはいはい。ガルーダとかバロンの彫られたZIPPOね。あるある。あるよ。案内してあげよっか。え? 彫られてなくてもいいの? ペイントでもいいんだ? それなら楽勝であるよ。本当本当、マジマジ。おにいさん、東京? 俺も東京に3年住んでたからさ。どこ? 足立区? あーわかるわかる。だって俺西新井住んでたもん」って、めちゃめちゃ馴れ馴れしいです。
冷麺 | バリ旅行記 8

3.写真をうまく活用する

昔、雑誌編集者時代に「読者は最初は文字なんて読まない」と言われた。読まれる記事にはビジュアルが不可欠。旅行記を書くんだったら、写真素材はとにかく取りまくっておきましょう。別に写真の技術や高いカメラがなくても、雰囲気と内容が伝わる写真が撮れてればOK。場合によっては、イラストでもいいかもしれない。
とにかく、「旅先の見たこともない風景」を文字のみで伝えるのは、素人には至難の業なので、写真をうまく活用しましょう。そもそも、撮ったからには誰かに見せたいでしょ? その旅行写真。

良い例

ホテルでドレスアップし、ちょっと気合を入れてブイヤベースを食べに行きます。Cipolinaさんが紹介されていたMICHELは予約が一杯だったので、ホテルの方お勧めのChez Fonfonへ。


南仏あっちこっちそっちドッチ2008 ~part.10~ – SUPER☆STAR☆JET

ぶっちゃけ このレベルで写真に魅力があったら、それだけでもう成功です。

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まとめ

さて、いかがだったでしょうか。これら3項目に注意して、というよりも、これら3項目は「旅行記を書きたいけど書けない…」というときのためのガイドラインとして、皆さんどんどん旅に行って、行ったら旅行記を書きましょう。僕は皆さんの旅行記が読みたいんです。

そして、旅行記は読む人のためのものでもあるけど、究極的には将来の自分に向けた贈り物でもあります。あれだけ楽しかった旅の思い出も、記憶はいずれ風化するし、写真では四角いフレームの風景しか切り取れない。
文章だけが、記憶よりも長く、写真よりも広く、匂いや音さえも記録できる唯一の記録媒体なのです。


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